週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本欄では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第28回は「なすのフルコース」です。
トロ~り「焼きなす」&ご飯が進む甘辛い「なすしぎ」
主に9月~10月にかけて実をつけ収穫するなすは、「秋なす」との別名を持ちます。真夏のなすに比べ、強い日差しを浴びていない分、皮が薄くて肉質も柔らかくみずみずしいのが特徴です。
クッキングパパ 第19巻「COOK.187 収穫の喜び なすびのフルコース」では、焼いて、煮て、揚げた“なすづくし”がズラリ。味付けも和・洋・中とバラエティに富んでいるので、毎日食べても飽きません。淡泊ななすの底力を再発見するメニューを、ひと品ずつ紹介しましょう。
まずは、「焼きなす」から。焼き網の上で丸ごとコロコロ転がしながら、中が柔らかくなるまでじっくり火を通します。焼き上がったらすぐ水の中へ。皮をむいてよく水気を切ったトロトロのなすを、生姜醤油でいただきます。
カンタンではありますが、旨味を閉じ込めるべく素早く皮がむけるよう、予めヘタの先に切り込みを入れるのをお忘れなく。
お次は「なすしぎ」。いちょう切りにしたなすを、変色したりえぐみが出ぬよう水にさらしあく抜きしてから、炒めます。なすが油を吸ってしんなりしたら、味噌、料理酒、砂糖を混ぜた味噌だれをかけて煮詰め、最後にほんの少し醤油を加えて完成。甘辛い味噌味で白いご飯が進む進む…
作り置きに便利な「だしなす」 「なすバーグ」はお弁当のおかずにも
3品目の「だしなす」は、昆布、削り節、料理酒、みりん、醤油から丁寧にとっただしがキメ手。なすを半分に切って、格子に切れ目を入れてからあく抜きをします。
ごま油とサラダ油を半々に入れたフライパンに、にんにくと唐辛子を入れて香りが出たところになすを投入。さらにだし汁の中でひと煮立ちさせてから、冷蔵庫で冷やして味をしみ込ませ完成です。作り置きにもいいですね。
最後は、「なすバーグ」。ハンバーグのタネにみじん切りにしたにんにくと生姜を加え、厚めに輪切りにして片面だけ小麦粉をつけたなすの上にそれぞれ盛り付けます。油で揚げたら、味付けはケチャップやとろけるチーズで。夏休み明けで再開したお弁当のおかずにもおススメです。
油と相性抜群のなすは、ほかにもピリッと辛い麻婆なすやごま油で炒めて味噌汁にしたり、そのまま塩もみしただけでも楽しめます。
相反する意味を持つ「なす」の言い伝え
作中では、荒岩主任(当時)の母が、妊娠中の嫁に対して用いた「嫁に食わすな 秋なすび」の言い伝えが気になります。なぜなら、この言い伝えは相反する2つの意味を持つとされるからです。
前述したように「秋なす」は最も美味しいとされることから、「もったいないから嫁には食べさせるな」という姑の嫁いびりとされるもの。一方で、90%もの水分を含むなすの食べ過ぎは、体を冷やし身体に不調をきたすと嫁を気遣う言葉ともとらえられています。
さて、義母の真意はいかに…
文/中島幸恵、漫画/うえやまとち
◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。 週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年8月現在、単行本は162巻。