週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本欄では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第29回は「スイートポテトプリン」です。
「スイートポテトプリン」で旬の美味しさを余すところなく
素朴な美味しさに加え、ビタミンCやカリウムを豊富に含むさつまいもは、老若男女を問わず年中親しまれていますが、特に収穫の秋は、風味もホクホク感も一層増して食べごろを迎えます。
焼きいも、大学いも、スイートポテトに芋のモンブラン……近年、巷ではさつまいもを主力商品にしたスイーツ専門店が人気です。なかでも注目度の高い「プリン」を、クッキングパパ 第19巻「COOK.186 みんな大好き おいもさん!!」を参考にして、たっぷり手作りしてみませんか。
クッパパ流レシピは中火を守ってなめらかさアップ
さつまいもを蒸している間、カラメルソースを作っておきましょう。
グラニュー糖と水は、同じ分量で小鍋に入れます。中火にかけて砂糖の色が変わるのに注視しながら、混ぜずに煮詰めて焦がしていきます。
茶色に色づき湯気が出始めたらすぐに火を止め、お湯を少量加えて余熱でソースをやわらかく伸ばしていきます。濃すぎると苦味が強く、湯量が足りないとべっこうあめの要領で固まってしまいますので要注意。
さつまいもが蒸し上がったら、皮をむいて小さめに切り、グラニュー糖や牛乳などと一緒にミキサーに入れてなめらかなペースト状にします。
別のボウルには卵や残りの牛乳、ラム酒を混ぜ合わせます。香りづけのラム酒は、素朴なさつまいもをランクアップしてくれますのでお忘れなく。さらに双方をひとつの鍋に移し替えて、弱火で丁寧に混ぜ合わせます。
でき上がったプリンダネは、カラメルソースを敷いた容器に泡を立てぬよう静かに注いだら、蒸し器に入れて中火で20分蒸したらできあがりです。ただし、強火で蒸すと、プリンダネの中に気泡(「す」)が入った状態で食感が悪くなってしまうので、火加減には特に気をつけましょう。
濃厚なホクホク感とやさしい甘さに気持ちまでほっこり、思わず笑みがこぼれますね。脚注にあるように、お好みでさつまいもの量を加減すると、味わいの変化を楽しむことができます。
プリンも蒸せる「せいろ」の魅力 うま味たっぷりで蒸気には癒し効果も
ところで、作中ではプリンダネを蒸すのに「せいろ」が使われています。
せいろは、竹や杉、ひのきでできや昔ながらの蒸し器です。実は、プリンや茶わん蒸しをせいろで蒸すと、食材への熱の伝わり方がステンレスなどに比べてじんわりゆるやかなため、「す」が入りにくい利点があります。
ほかにもブロッコリーやカボチャなどの野菜をせいろで蒸すと、うま味が凝縮されるほか、水分を調整してくるので、冷えたご飯も炊き立てのような味わいになるのです。多少時間はかかるものの、電子レンジでの調理にはないメリットを感じられるでしょう。
ほんのり上がる蒸気の香りに癒されれば、キッチンに立つ楽しみがまたひとつ増えそうですね。
文/中島幸恵、漫画/うえやまとち
◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。 週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年8月現在、単行本は162巻。