ベネズエラは「ナッティ」でブラジルは「フルーティ」……何のことかご存じでしょうか? 実はこれ、産地によるチョコレートの香味を表したものです。
2022年9月20日、『明治 ザ・チョコレート』が刷新され、新発売されました。近年、カカオポリフェノールの健康効果などで脚光を浴びているチョコレートですが、こちらもカカオ70%のいわゆる“ハイカカオチョコ”。そして香味が大きく異なる4か国のチョコレートを使っていることも特長です。
実は、そんな産地による味の違いは、チョコレートの“今”を映し出すヒントにもなっています。美味しいチョコが抱える危機と可能性とは? 取材しました。
4つの産地で異なる味わい! 「明治 ザ・チョコレート」が新発売
9月20日に発売された『明治 ザ・チョコレート』は全4種類のラインナップ。「4つの産地でつなぐ 4つのおいしさ」のキャッチコピーどおりベネズエラ、ブラジル、ペルー、ドミニカ共和国という4つの商品があり、それぞれ単一産地のカカオ豆を使った香味の違いを魅力として打ち出しています。
「ベネズエラ」はナッツのような香り&深いロースト感の芳ばしいコクと旨味が特長。このほか「ブラジル」はフルーティな香りと柑橘のようにさわやかな酸味、「ペルー」はジャスミンのようなフローラルな香り、「ドミニカ共和国」は力強い味わいでスパイシーな香りが特長とされています。
「本当にそれほど違うの?」と思いつつ、実際に産地ごとのチョコを頬張ってみると、思った以上に味わいの違いは明確。このように“味”を意識しがちなチョコレートですが、その違いを生む“生産国”を意識する機会は意外に少ないのではないでしょうか。
明治の資料によると、2020年の全世界におけるカカオ豆生産量のうち77%をアフリカが、17%を中南米が占めており、生産地域はいわゆる「カカオベルト」(北緯20度~南緯20度の間)に集中している現状があります。そして、これらの生産国では、これまでカカオ生産でさまざまな課題を抱えてきたのが実情でもあります。
身近だけど遠い? チョコを“食べる”日本とカカオを“作る”国の実情
なかでも最も大きいのは、カカオ豆生産地域や農家の周辺でおこる児童労働や強制労働、そして環境破壊の問題。
明治が2005年に発足させた「カカオ基礎研究グループ」では現地活動のなかで、木の高齢化や森林破壊、さらには発酵技術や栽培知識の不足、苗木や肥料調達が難しい現地の厳しい実情に直面したといいます。
そして、もうひとつの大きい課題、それはチョコレートにできるのが、カカオの実全体のうち約10%にすぎないということ。逆に言えばざっくり約90%は資源化できていないことになります。
明治によると、「世界全体のチョコレート消費量は長期トレンドで増加傾向」といいますが、カカオの実の大部分が資源化できず、労働問題や環境問題を抱える状況が続けば、当たり前のように美味しいチョコレートを食べる習慣に危機が訪れる可能性は確実に高まるでしょう。
こうしたチョコレートを取り巻く環境を考えるため、9月8日に明治が主催したイベントが「カカオ、ひらく。LAB」。大学生や社会人約30名も招いて開催された同イベントでは、「カカオの新しい栄養や食べ方の価値・可能性を持続的に広げていくには」をテーマに、思い思いの案が出されました。
なかでもカカオの活用案として印象的だったのは「カカオ石けん」。「人にも地球にも優しいカカオ石けんで世の中を“セッケン”する!」という力強いメッセージとともにプランが発表されました。
美味しいチョコレートを楽しみ続けるためには
今やさまざまな分野で「持続可能な~」、「SDGs」という言葉が使われるようになりました。筆者自身の思いを正直に書くと、こうした動きにはさまざまな思惑がある場合もあり、やや言葉だけが独り歩きしている印象もあります。
ただ、「チョコレート」のように身近な食品となれば、小難しい言葉はさておき、やっぱり美味しいものを食べ続けられる仕組みであってほしいし、それを食べるからには、作ってくれる人たちの実情から目を背けるわけにはいかないでしょう。
本当の意味で美味しいチョコを食べ続けるには、背景にある現実を今よりチョコっとでも知り、より正しい選択をする。
作り手にとっても食べる側にとってもハッピーなチョコレートが世界を席巻する未来へ。それが私たちにできる小さな行動かもしれないなと、チョコ好きの筆者は実感させられました。
取材・文/高瀬雄士(おとなの週末Web編集部)、撮影/編集部、画像提供/明治