年間700食の外食をするタベアルキスト・マッキー牧元さんが全国の立ち食い蕎麦を巡る不定期連載。今回は、大阪へ。朝のビジネス街で、蕎麦ではなくうどんをいただきました。
大阪で楽しめる本格讃岐うどん
朝7時開店。
飲食店が少ない、ビジネス街にある立ち食いうどん屋に、次々と人が入っていく。あちらは、朝食を家で取らずに、『きりん屋』でうどんを食べようと決めてきた、サラリーマンかな。
遠方からわざわざ来たと話す、20代の男女もいる。様々なお客さんが、しずしずとうどんをすすっている。
ここは大阪だが、大阪うどんの店ではない。
香川の名店で修業したご主人が、ひとりで切り盛りする立ち食いうどん屋である。立ち食いといえど、仕事ぶりが誠実で素晴らしい。
「元祖釜かけうどん」を頼むと、うどんを茹で始めた。傍らで1人前のツユを、鍋に入れて温める。
うどんが茹で上がると、釜揚げなので,冷水で締めずに丼に盛る。熱々のツユを張る。ネギを盛り、トッピングに頼んだ生わかめを冷蔵庫から取り出し,ネギの横に添える。
「前後しますが、釜かけうどんお待ちどうさまでした」。
そう言って、頼んだちくわ天を揚げ始めた。客は、天かす、イリコダシに使ったイリコ、おろし生姜を、好きなだけ乗せ、食べ始める。
まずはツユをひと口。
旨みにキレがあり、深い。香川の名店と、寸分たがわぬ、しみじみとした旨さが、舌を包む。
うどんは、ほのかに小麦粉の甘い香りを感じさせながら,つるんと口に登ってくる。歯を押し返しながら、20数回噛むとようやく消えていった。コシの強さもまた、うどん県ゆずりである。