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カキが旨い季節である。ジューシーなカキフライ、セリがたっぷり入ったカキ鍋、炊きたてのカキご飯。カキ漁師は、海で採れたてのカキの殻からナイフで身を剥いて、海で洗ってそのまま生で食べるのが好みだという。
そんなカキ漁師の旅の本が出版された。『カキじいさん、世界へ行く！』には、三陸の気仙沼湾のカキ養殖業・畠山重篤さんの海外遍歴が記されている。
「カキをもっと知りたい！」と願う畠山さんは不思議な縁に引き寄せられるように海外へ出かけていく。フランス、スペイン、アメリカ、中国、オーストラリア、ロシア……。
世界中の国々がこんなにもカキに魅せられていることに驚く。そして、それぞれの国のカキの食べ方も垂涎だ。これからあなたをカキの世界へ誘おう。
連載10回「ここにきて、やっぱり凄かった…宮城新昌、100年前にアメリカで大成功した「運命のカキ」の味」にひきつづき、アメリカワシントン州シアトルの汽水域で育つオリンピアガキを訪ねる旅。どんな胸躍る出会いがあるのだろうか。
わが舞根湾にそっくりのたたずまい
ここが、若き日の宮城新昌が修業した養殖場か！ 胸をおどらせて海辺に近づき、風景を見ると、なんとわが舞根湾にそっくりのたたずまいではありませんか。
かき研究所の創設者、今井丈夫先生もここに来られたはずです。そして、同じ風景の舞根湾に同じようなデザインの研究所を建てたのです。
残念ながら今日はレイバーデイの休日で、事務所にも人影は見当たりません。しかし、この風景を目に焼き付けることができただけで満足でした。
対岸から見えた白いものはやはりマガキの殻でした。むき身にして販売しているのです。約100年前、日本から移入したカキが、その後何代にもわたって受け継がれ、漁民の生活を支えて、カキ文化を醸成しているのです。
水槽を覗くとプラスチックのカゴに入れられた小粒の殻の黒いオリンピアガキが、ズラリと並んでいました。今までの情報によると、オリンピアガキの生産はガタ落ちと聞いていますが、さすが老舗、かなりの生産量があるとみました。
宮城種は、宮城新昌によってこの地に移入され、オリンピアは今井先生の手で舞根湾に運ばれた。とても遠い日のことです。カキに魅せられた二人の男は、はるばる太平洋を渡ってオイスター・ベイの地を踏んでいるのです。
宮城新昌は約100年前、今井先生は50年前、そして2002年9月、このわたしが……。
万感胸に迫るものがありました。そして、オリンピアガキが好きだった父を思い出し、持参した写真をオイスター・ベイに向けてかかげたのです。
