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古今東西、美味しいグルメを追い続けてきた、東の食のジャーナリストのマッキー牧元(まきもと)さんと、西のグルメ王の門上武司(かどかみ・たけし)さんが互いに「オススメの一皿」を持ち寄って紹介します。食の達人たちが織りなす“おいしい往復書簡”をどうぞお楽しみください。

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今回のお題は「う巻」

鰻の蒲焼をくるんだ玉子焼きの〈う巻き〉は、どう考えても旨い、酒を呼ぶ一品。断面からチラリと姿を見せる鰻に、思わずくぅ~! となりませんか?今回ご紹介する東西両店は、いずれも歴史ある鰻の名店。東は、お江戸日本橋のど真ん中で、今なお粋な姿の〈う巻き〉を提供。西は、京都のなかでもひと際華やかな街・祇園で、端正なそれを供しています。

色気と粋がひとつになった江戸っ子の美意識『日本橋いづもや本店 本館』@東京

【東のう巻き】

「まずこの姿に、見惚れます。どうだこれでもかといった押しの強さは決してないのに、見るからに旨そうな佇まい。これぞ江戸の粋」(牧)

「う巻」1900円(税別)※夜のコースにはすべてに「う巻き」が含まれます。写真は単品の一人前

『日本橋いづもや本店 本館』う巻1900円(税別)

門上さん、〈う巻き〉は、江戸の鰻屋には欠かせない料理です。だが今、東京には数多くの鰻屋はあるものの、意外に置いてある店は少ない。理由は、う巻きだけで人手が取られてしまうからのようです。将来的には希少な料理になってしまうかもしれませんね。

さて、う巻きの理想はなんだろうと考えた時に、それは一体感にあるのではと思いました。玉子焼きも蒲焼も素晴らしいものですが、ただおいしいだけのものを合わせた料理ではないと思うのです。

その点を『日本橋いづもや』の「う巻き」は、わきまえています。玉子焼きの調味料やだしは控えめで、卵の素朴な甘みだけで成り立ち、そこへそっと蒲焼が巻かれている。玉子焼きと蒲焼の量のバランスも精妙です。

また鰻は、卵の柔らかさに馴染むよう、柔らかく、かつ皮が舌に残らないように焼かれている。食べれば、卵の穏やかな甘みと甘辛いタレ、鰻の滋味が、すうっとひとつになって舌に乗ってくる。口に入ったときに乖かい離りせず、きちんとひとつの味わいに到達する料理は、美しい。当然ながら、出来上がりの姿も、見惚れるくらい、艶っぽく仕上がっています。

このさりげない美しさ、色気こそが、江戸料理の妙。江戸っ子が最も大切にしていた「粋」を体現していると思うのです。門上さん、そんな粋を味わいに、お江戸にいらっしゃいませんか。

『日本橋いづもや本店 本館』

[店名]『日本橋いづもや本店 本館』
[住所]東京都中央区日本橋本石町3-3-4
[電話]03-3241-2476
[営業時間]11時~14時(13時半LO)、17時~21時半(20時半LO)
[休日]日・祝
[交通]地下鉄銀座線三越前駅A8出口から徒歩3分、JR総武線新日本橋駅2番出口から徒歩2分

マッキー牧元

マッキー牧元

自腹タベアルキストであり、コラムニスト。『味の手帖』主幹。また、東京・虎ノ門ヒルズにある飲食店街〈虎ノ門横丁〉のプロデュースを務めるなど、ますます多彩に活躍。

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背開き地焼きの鰻の真髄をだし巻きで堪能『かね正(しょう)』@京都
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