古今東西、美味しいグルメを追い続けてきた、東の食のジャーナリストのマッキー牧元(まきもと)さんと、西のグルメ王の門上武司(かどかみ・たけし)さんが互いに「オススメの一皿」を持ち寄って紹介します。食の達人たちが織りなす“おいしい往復書簡”をどうぞお楽しみください。今回のお題は、みんな大好き庶民の味「たこ焼き」です。
マダコの値上がりで…
ご存知の方も多いかもしれませんが、昨今は過去に例のないマダコの値上がりでなんならタコ以外の具でも、たこ焼きスタイルで売られているとか……泣けます。
そんな中、新たな境地の味わいでまだ見ぬ世界へと連れて行ってくれる店が、東京に登場。そして聖地・大阪では、これぞホンマもんの実力と矜持を、これでもかと見せつけてくれています。みんな大好き庶民の味は、決して一筋縄ではいかない&語れないと、実感した次第です!
たこ焼きそのものの可能性が広がる新境地の味わい『蛸正』@神保町
【東のたこ焼き】
「自家製ソースにもダシがたっぷり使われている。味の変化と季節感を加えたシーズンネタは、訪問時は白胡麻餡とわさび、秋茄子生姜醤油、南瓜すり流しグラナチーズと、もはや縦横無尽な美味満載」(牧)
門上さん。たこ焼きは、東京にとって不利なお題ですね。チェーン店を除けば店自体が少ないですし、そのおいしさを求める人も少ない。最近は、マグロ以上に高騰したマダコの影響で、店を畳むことも起きているようです。そんな中、僅かながら、大阪と遜色のない店もあるのですが、今回は“新たなたこ焼き”を目指す店を紹介します。
まず佇まいからして和菓子店かと見間違う、たこ焼き屋らしからぬ端正な外見をしています。メニューを開けば定番のソース&マヨの他、醤油ダレ&本わさびがある。さらには季節のたこ焼きも数々。つまり従来のそれとは違う、たこ焼きの可能性を探ろうとしているのですね。
自家製 ソース&マヨネーズ680円(6個)
そして、生地には驚かされました。信じられないほどたっぷりダシを入れているのです。だから表面はふんわりとしていますが、中はトロトロ。噛んだ瞬間に生地が舌の上に流れ出て、夢見心地に誘います。これだけ加水率が高い生地をまとめて焼き上げるのも、相当な技術が必要でしょう。昨今の表面がカリッとして中がモチッとしたものとは、対極にあるやさしさです。そのやさしさに、旨みが丸い自家製ソースと自家製マヨネーズが、実に合う。これだけ丁寧に考えられたたこ焼きはないのではないかと、店主のたこ焼き愛に打たれます。
門上さん、季節のたこ焼きも完成度高いです。一緒に新たなたこ焼きをつまみませんか。
[店名]『蛸正』
[住所]東京都千代田区神田神保町2-14-4-107
[電話]050-5532-6642
[営業時間]12時〜22時(21時半LO)
[休日]月(※祝の際は翌火休)
[交通]地下鉄半蔵門線ほか神保町駅A4出口から徒歩1分
マッキー牧元
自腹タベアルキストであり、コラムニスト。『味の手帖』主幹。また、東京・虎ノ門ヒルズにある飲食店街〈虎ノ門横丁〉のプロデュースを務めるなど、ますます多彩に活躍。
-
¥4,380(税込)
-
¥5,400(税込)
-
¥5,100(税込)
-
¥5,280(税込)