古今東西、美味しいグルメを追い続けてきた、東の食のジャーナリストのマッキー牧元(まきもと)さんと、西のグルメ王の門上武司(かどかみ・たけし)さんが互いに「オススメの一皿」を持ち寄って紹介します。食の達人たちが織りなす“おいしい往復書簡”をどうぞお楽しみください。今回のお題は、中国から伝わり、長い歴史をもつ「焼売」です。
焼いてないのに「焼売」
焼いていないのに焼くという字を当てる焼売。かつて中国で惣菜を作るという意味にこの字が使われていたのが理由とか、諸説は色々あるようで。
そんな焼売ですが、日本への伝わり方や、またそれを広めた人々、時代など長い歴史が育むさまざまなストーリーが詰まっているんだなと、改めて実感した今回。大きかったり小ぶりだったりサイズ感は真逆ですが、東西いずれも愛され系なのは、間違いなし!
創業以来伝承の味、姿、大きさに心をわし掴みにされる『新橋 新橋亭(しんきょうてい)』@新橋
【東の焼売】
「シンプルにいただきたいときはまずそのまま、次に酢だけか溶き辛子酢(もしくは黒酢)でいただきます。ご飯のお供にしたいときは、溶き辛子醤油がおすすめです。僕は2個頼み、両方楽しみます」(牧)
特製 大焼売330円(1個)
門上さん。薄皮が破れると、豚の香りが広がり、肉の旨みが現れる。僕はそんな焼売をこよなく愛しています。
サイズも大事で、『崎陽軒』のシウマイに代表される、ふた口大が理想だと、長年思っていました。
しかしその概念を覆されたのがこの店です。昭和21(1946)年、終戦後に創業した『新橋亭(しんきょうてい)』には、創業来の名物、「大焼売」があります。この大きさは、戦後でひもじい思いをしている人たちに一個でも、お腹が膨れる焼売を提供したいと考えたからだそうです。このあたり、以前ご紹介した『維新号』の肉饅と、同じ発想ですね。
注文すると、富士山型にそびえ立つ焼売が現れ、麓は小籠包のように膨らんでいる。これは豚肉から出たラードが貯まって、膨らんでいるのです。だからそれを逃さないように、普通の焼売より皮は厚い。
食べ方も普通の焼売のように横からかじりついてはいけません。山の頂上からかじりつく。すると肉の旨みが一気に口の中を満たします。次に麓の膨らみを食べる。たぷんと広がった皮が弾けると、熱熱のラードが舌に広がり、甘い香りが鼻に抜けていく。肉と脂、ふたつの魅力を楽しめる。これがまた他の焼売にはない、魅力なのですね。
門上さん、どうですか。大きな口を開けて焼売にかじりつくという、新たな幸せを体験しませんか?
[店名]『新橋 新橋亭(しんきょうてい)』
[住所]東京都港区新橋2-4-2
[電話]03-3580-2211
[営業時間]11時~22時(21時LO)
[休日]年末年始
[交通]JR山手線ほか新橋駅日比谷口から徒歩3分、都営三田線内幸町駅A1出口から徒歩2分
マッキー牧元
自腹タベアルキストであり、コラムニスト。『味の手帖』主幹。また、東京・虎ノ門ヒルズにある飲食店街〈虎ノ門横丁〉のプロデュースを務めるなど、ますます多彩に活躍。
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