今でこそ世界で確固たる地位を築いている日本車だが、暗黒のオイルショックで牙を抜かれた1970年代、それを克服し高性能化が顕著になりイケイケ状態だった1980年代、バブル崩壊により1989年を頂点に凋落の兆しを見せた1990年代など波乱万丈の変遷をたどった。高性能や豪華さで魅了したクルマ、デザインで賛否分かれたクルマ、時代を先取りして成功したクルマ、逆にそれが仇となったクルマなどなどいろいろ。本連載は昭和40年代に生まれたオジサンによる日本車回顧録。連載第84回目に取り上げるのは1997年にデビューした初代日産エルグランドだ。
次期型モデル公開で大注目
今最も注目を集めている日本車といえばその筆頭格が日産エルグランド。10月30日(木)~11月9日(日)に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されたジャパンモビリティショー(JMS)2025で次期型のプロトタイプを世界初公開。日産では2026年に発売とアナウンスしているなか、7~9月の夏頃のデビューが確実視されている。
今ではLクラスミニバンと言えば、トヨタのアルファード/ヴェルファイアの独占状態にある。2025年の販売状況を見ると、アルファードが10月に8086台(1~10月累計7万4029台)、ヴェルファイアが同3688台(2万8129台)なのに対しエルグランドは同48台(1323台)。データを見るまでもないが、日産エルグランドはまったく相手にならない存在に成り下がっている。現行モデルはシリーズ3代目で、なんとデビューは2010年。2020年にビッグマイチェンによりエクステリアデザインが一新されたが、それさえも5年前。新型登場云々の前に、残念ながら現行モデルは商品力を失っている。
キャラバン/ホーミーの乗用モデルとして登場
今回取り上げる初代エルグランドがデビューしたのは1997年5月。日産の商用1BOXのキャラバン/ホーミーの乗用車モデルというポジションだったため、キャラバンエルグランド/ホーミーエルグランドという車名でデビュー。この商用車からミニバンを派生させるのは当時では当たり前のことで、日産ではバネットセレナ→セレナ、バネットラルゴ→ラルゴと車名変更したのと同じ流れで、初代エルグランドは1999年のマイチェンでキャラバン/ホーミーの名前が消えてエルグランドとなった。コンセプトは『最高級新世代1BOX』というもので、それを具現化した当時の日本のミニバン最高峰のモデルだった。
キャラバンエルグランドとホーミーエルグランドは販売店向けの姉妹車で、キャラバンエルグランド(青地のエンブレム)がモーター系、ホーミーエルグランド(赤地のエンブレム)がプリンス系で販売された。両モデルはエンブレムの地色で差別化されていた程度。
BOXタイプミニバンの決定打
ミニバンのパイオニアは1983年デビューのダッジキャラバンと言われている。一方1990年代の日本では乗用タイプミニバンとBOXタイプミニバンに分類されていた。乗用タイプミニバンとは今でいうところのワゴン/セダンとミニバンのクロスオーバー的なモデル、BOXタイプミニバンとはデザインがBOX型、ただしキャブオーバーと違い独立したボンネットを持つセミキャブオーバーで、商用モデルが1BOXと呼ばれたのに対し1.5BOXという言われ方もしていた。それぞれ流行時期が違い、乗用タイプは1994年の初代ホンダオデッセイ、BOXタイプは1996年の初代ホンダステップワゴンがブームをけん引し、数多くのライバル車を生んで、ミニバンブームとなった。
そして、そのBOXタイプミニバンの決定打が初代エルグランドだった。






















