さまざまな料理道具が集まる浅草・かっぱ橋道具街にあるお箸屋さん。各地の料亭からレストランから食堂まで、さまざまな形態・業種の割り箸についての歴史や文化について教えてもらいました。
「素材」に今が映り「形」に美が宿る
割り箸の話を伺ったのは、合羽橋の専門店『はし藤本店』の社長・上中さんと広報・中田さん。森から手元までが仕事の範疇、樹木の話で盛り上がりました。
「割り箸ってきれいにふたつに割れるものと、割れないものがあると思いませんか?」と投げかけたのは上中さん。
「昭和以降に量産された“いわゆる”割り箸は、軽量で加工しやすい北海道の樺が多かったんです、しかし、その生産の中心は中国に移されました。それに続いて中国で登場したのがアスペン材(白楊)。樺もアスペンも問題は繊維が細かいのでケバ立ちやすいこと。昔は箸を割った後にシュッシュとよくしごいていましたよね。あれです。左右対称に綺麗にふたつに割れないのもこれが理由です。昨今、ロシア原木の箸が日本に入らなくなって、国内の流通量が激減しました」ということのよう。
そもそも、割り箸の最初は、杉。
「割り箸の発祥は奈良県の下市。よい杉が採れた吉野地方の中心地です」と広報の中田さん。名刺が杉の薄皮製でいい香り。
「日本酒の酒樽用に目の詰まった杉で樽を作っていたが、端材や余材で割り箸を作り始めた。端材である白太(丸太の外側に近い部分)は目が細かく、強度に優れるためうってつけでした」
江戸時代は蕎麦、寿司、うなぎなど屋台文化と出前文化が花開いた時代で、衛生面からも割り箸が庶民に広まっていった。それらは「引き裂き箸」とも呼ばれ、未使用の印だった。割れやすさからも竹も多く用いられた。
竹製の割り箸は「油を弾くので、天ぷら屋さん、うなぎ屋さんは昔から竹箸を使うところが多いです」(上中さん)。
爽やかな香りを持つ北海道産の椴松(トドマツ)も愛される。間伐材を有効活用したもので、「針葉樹は広葉樹に比べて目が真っ直ぐできれいに割れやすく、割り箸に向いています」(中田さん)。
王様の杉は、白赤の木目が美しく、曲げ強度が強いために箸に向く。特に赤杉は最高級品で、香りと殺菌作用を持つ。
「銀座の料亭や高級お寿司屋さんは、赤杉を使うところが多いです」(上中さん)。
檜になると、杉よりも硬いため、より細身の箸が作れる利点がある。
箸の面白さは語りつきぬけれども、「我が社は『森と木工職人を再発見する』というテーマを掲げています。箸を通して森のことを想像していただけるとうれしいですね」(上中さん)。
「日本に山があり、森があります。理想のお箸は、地産地消。その土地のものをその地の割り箸でいただくと格別ではと思います」(中田さん)。
『はし藤本店』社長:上中康成さん
1910年創業の『はし藤本店』4代目。国産割り箸の種類は日本一。多くの飲食店に箸を納めつつ、箸文化を世界に発信している。
『はし藤本店』広報:中田創さん
箸や木のよさを広める仕事。曰く「レストランでは一度だけ使う。家庭では使い倒す。そう考えると箸は不思議な存在です」
お箸の専門店『はし藤本店』
[店名]『はし藤本店』
[住所]東京都台東区西浅草2-6-2
[電話]03-3844-8403
[営業時間]10時〜17時半
[休日]日・祝
[交通]つくばエクスプレス浅草駅出口、地下鉄銀座線田原町エレベーター出口、それぞれから徒歩7分


















