「食だけじゃない。ベトナムの“空気”そのものを体感するーー」そんなフェスが、2026年も代々木公園に帰ってくる。2008年にスタートした「ベトナムフェスティバル」は、いまや初夏の代々木を彩る風物詩。ベトナム政府公認の交流イベントとしては海外最大級を誇り、毎年10万人以上が来場する。会場には、香ばしいバインミー、湯気立つフォー、炭火焼きの肉料理など、約120のブースがずらり。歩いているだけで、東京にいながら“ホーチミンの夜市”をさまよっているような気分になる。
そして今年のテーマは、「没入型」の体験
ただ“見る”“食べる”だけではない。音、香り、熱気、人の声――そのすべてに包まれながら、ベトナムへ入り込んでいく。
その象徴となるのが、「水上人形劇」だ。水面に現れる、“もうひとつのベトナム”。
会場を歩いていると、賑やかな喧騒の中に、不思議と人が吸い寄せられていく一角があるはずだ。
小さな水の舞台。そこだけ、空気の流れが変わる。
太鼓が鳴る。笛の音が重なる。水面がゆれる。
次の瞬間、木製の人形が、水しぶきを上げながら躍り出る。歓声が上がる。
演者たちは舞台裏で胸まで水に浸かり、長い竹竿と糸を巧みに操っている。だが、そんな“技術”を意識する暇もないほど、観客は物語に引き込まれていく。
農村の暮らし。
収穫祭。
川遊び。
龍や精霊たち。
どこか懐かしく、でも見たことのない世界。
言葉はわからなくてもいい。
ただ水面を見つめているだけで、感覚が“向こう側”へ連れていかれる。派手ではない。だが、気づけば夢中になっている。それが、水上人形劇の不思議な力だ。





