大阪でのカレーの立ち位置はもはや“粉もん”に並ぶ勢い。独自に進化したスパイスカレー店が乱立し、ますます増加中だ。場所によっては徒歩でカレー店のハシゴができる密集地帯もあるほど(特にミナミ方面)。なぜ大阪でブームなのか?も徹底追及。
画像ギャラリーはじめに
大阪では独自に進化したスパイスカレー店が増えており、今や定番の粉もんに並ぶ勢い。明治時代に初めてカレーが国内に入ってきたとき、新しいものが好きな大阪人が一番先に飛びついた歴史もあり大阪でカレーが流行る下地はできていた。
大阪で独自に進化し、ブームが到来している理由とともに、大阪で人気のあるスパイスカレー店を厳選!いざ、魅惑のブームをとくとご覧あれ!
スパイスカレーはなぜ大阪で独自に進化したのか?
そもそもなぜ大阪にだけ、ここまで熱狂的なスパイスカレーブームが巻き起こっているのか。
大阪とカレーのつながりは実は古い。明治時代にカレーが日本に入って来た時、ご飯の上に黄色い液体がのっていることに、一般の日本人は気味悪がった。ただ、大阪人だけは「新しいもん好き」精神に乗っ取り、いち早く飛びついたのだとか。なかでも有名なのは、『自由軒』(1910年創業)。ご飯にルウを混ぜ込んだカレー飯のようなものに生卵を乗せ、混ぜまぜして食べるカレーだ。さらに今でも絶大な人気を誇る『インディアンカレー』に、『サンマルコ』『福島上等カレー』など、大阪に地盤を置くカレーチェーンは多い。これらの特徴は「最初は甘く感じるが、食べていくうちに辛くなる味」。甘さの素は野菜や果物を煮詰めたりしたもので、いわゆる日本的にいうダシのようなもの。インドカレーとは全く違う、ジャパニーズカレー(欧風カレー)を作り出した。
一方、静かに息づいていたのが現地シェフによるインド料理店だ。スパイスの辛みが特化した純粋なインドカレーは、日本在住の現地人には受けたが、ポピュラーにはならなかった。しかし日本人向けにアレンジしたものが大阪で誕生。インドカレーとも欧風カレーとも違う、スパイスカレーの始まりである。
大阪・北浜にある『カシミール』(1990年頃創業)はそんなスパイスカレーブームの先駆者ともいわれ、カレーファンの間ではレジェンド的存在である。(なんとマスターはEGOWRAPPIN’の元ベーシストとか)。営業は平日のみ、12時オープンだが1~2時間遅れることはザラ。なのに行列。そして2~3時間で売り切れる、というハードルの高さから幻のカレーとも言われている。大阪のスパイスカレー店はほとんど何らかの形で影響を受けているといっていい。ここで種はまかれた。
そして2012年以降じわじわとカレーブームがやってくる。
大阪でスパイスカレーブームが絶賛独走中!
大阪のスパイスカレー店開業には、ある独特な法則が存在する。キーワードは「間借り」だ。「間借り」とは夜のみ営業するバーなどの閉店している時間(昼間)に調理場を借りて営業するスタイルである。カレーに目覚めた若者達が趣味を越えて「人に食べてもらいたい!」という気持ちから「間借り」営業が大流行り。隠れ家的小バコ&昼間限定、というレア感も手伝ってSNSなどにより拡散。HPなんかなくたって旨いと評判の店にはすぐに人が集まった。
『北新地 林家』もそのひとつ。
麻婆豆腐カレーなど、個性派を出せるのはリスクの少ない「間借り」システムならでは。オープン間もなくして連日満席の人気店になった。
【※閉店※北新地 林家/北新地】ピリリ花椒にシビれる「麻婆カレー」、中と印の刺激的な出合い
【閉店】北新地 林家
お店の名物は「麻婆カレー」。麻婆豆腐とスパイスカレーの合わせ技メニューで、刺激の強さが癖になる逸品。女性店長のセンスが光るハート形ライスも可愛いです。麻婆豆腐独特の花椒の辛みと、スパイシーカレーの辛みがWで押し寄せる刺激的なカレー。ほかにはない個性的なメニューを楽しみたいならおすすめ。
夜は欲望渦巻く北新地も昼間はふぬけて人もまばら。そんななか、どこからか香るスパイス香。テナントが密集する怪しげな雑居ビルの2階。深夜だけ営業するわずか9席の『深夜食堂 めしや』を間借りして、昼間にカレーを提供するのはピンクヘアがキュートなりんりんさん。※ランチタイム有
『アアベルカレー』も間借り卒業組である。某カレー雑誌にてグランプリを獲得し、人気が爆発。現地で修業したわけでも、経験があるわけでもない。ただカレーが好き。という一途な想いだけでこんなにも旨いカレーが作れる。
ただカレーが好き。という一途な想いだけでこんなにも旨いカレーが作れる。新店が出るたびにそのことに驚きを隠せない。もともとの大きな地盤があるからだろうか。
【アアベルカレー/九条】間借りからてっぺんへ独立を遂げ、さらに進化
アアベルカレー
店主が独立する準備期間に自らインドに赴きカレーを研究しただけあり、アチャールやライタなどの副菜の酸味や甘味など味のバランスがよいと評判。もちろん提供されるスパイスカレーの味わいも抜群。スパイシーでありながら旨味が凝縮されていてカレー好きにはたまらない一皿に。某カレー雑誌でグランプリ獲得の有名店で足を運ぶ価値あり。
2015年関西某誌カレーグランプリに輝いた間借り店が2016年4月に独立! 店主の安倍さんは独立の準備期間に改めてカレーを研究しにインドへ。※ランチタイム有
なかでも最近勢いがあるのがスリランカ&ネパールカレーだ。中央のライスを取り囲むようにルウと副菜が円形に並ぶワンプレートスタイル。俯瞰からのビジュアルが最高なうえ、インドカレーに比べスパイス、オイルが控えめで、薬膳的要素も持つカレーは、女性を中心に火がついた。
スリランカ代表は『セイロンカリー』
【セイロンカリー/長堀橋】 ガツンと来る辛みと旨み正統派スリランカカレー
セイロンカリー
正統派のスリランカカレーを楽しみたいならここ!2013年にスリランカからシェフを引き抜きオープンさせたお店。シェフがスリランカ人ということもあり、現地オリジナルのミックススパイスを駆使した本格派スパイスカレーが堪能できます。ルウとともにプレートに配置された副菜も混ぜ合わせると、風味や味わいが変化する点にも注目!
スリランカ料理に魅了されたオーナーの重國裕子さんが、スリランカからわざわざシェフを引き抜きオープンしたのが2013年。当初は閑古鳥だったが、カレーブームとともにじわじわと評判が広がり、今は開店時から行列必至。※ランチタイム有
ネパール代表は『ダルバート食堂』が、ほぼ現地の味を再現し、各国の特徴をよく現している(飲んだ〆に食べると二日酔い知らず!)。
【ダルバート食堂/谷町6丁目】体と心に染み渡るネパールのスパイシーカレー
ダルバート食堂
ネパールで食べ歩きをしたネパール愛にあふれる店主が腕を振るうお店。こちらのスパイスカレーは現地で「ダルバート」と呼ばれ、インドカレーと違い辛さや油っぽさ皆無。それゆえに素材の旨味がストレートに感じられます。ランチタイムメニューもあり気軽に楽しめるのも魅力。大阪で本格的なネパールカレーが食べたいならおすすめ!
ネパールに恋した店主・杉野さんが2015年5月にオープン。年に1~2度は現地で食べ歩き、今年からは自身がアテンドするネパールツアーも実施予定の超フリーク。※ランチタイム有
また、創作系では和の要素を取り入れたカレーも多い。『渡邊カリー』では鶏や鯛のダシを用いており、スパイスの奥に潜むほっこりとした味わいが毎日食べたくさせるのだ。肉厚カツのトッピングも日本的でかなりアツい。
【渡邊カリー/北新地】 肉厚カツが誘惑するダシ香るコクありスパイスカリー
渡邊カリー
お店の人気メニュー「スパイスとんかつカリー」は、150gの迫力ある厚切りトンカツとスパイシーカレーのコラボ。緑色のパクチーや赤い酢漬けキャベツなど色合いも目に鮮やかな一皿です。鶏や鯛など日本人にもなじみあるダシにスパイスを11種類混ぜた奥深い味わい。和風アレンジのスパーシーカレーを楽しみたい方へ。
ドドンと鎮座する150gの肉厚カツ。さらにターメリックの黄、パクチーの緑、酢漬けキャベツの赤。※ランチタイム有
そして筆者的に必ず訪れてほしいのが『旧ヤム鐵道』。スパイスカレーに和洋折衷の要素が凝縮したジャンルレスな一皿は、進化を続けるスパイスカレーの象徴そのものにも思える。
【旧ヤム鐵道/梅田】いつも先陣を走るカレーブームの底上げ隊長
旧ヤム鐵道
食堂車をテーマにした大阪のスパイスカレー店。さまざまな種類のスパイシーカレーが楽しめますが、月替わりのカレーが4種類あり好きな辛さが選べます。シンプルなあいがけメニューもあれば3種類のルウをかけるトリプル、さらに4種類全部のせるオールがけなどまるでアイスクリーム店のノリ。ルウが混ざり旨味や香りがブレンドされ満足。
ある月のメニュー「ローストスパイスが香ばしいぎゅうとんじゃがキーマにパセリと押し麦のタブーレ添え」「ケイジャンドライガンボ乗せ青チリで煮込む鮪と豚のキーマ」「ミックスハニーナッツと食べるさっぱり梅カツオ鶏キーマ」。興味をそそるラインナップに思わず前のめる。※ランチタイム有
おわりに
グルメ専門誌「おとなの週末」編集部&ライターが、大阪を東奔西走し、本当に食べて美味しいと自信を持っておすすめするスパイスカレーの名店を厳選。スパイスががつんと来る、心にしみるなど、楽しみ方は自由自在だ。大阪へ来る際は、ぜひめくるめくスパイスカレーを巡る旅へ漕ぎ出していただきたい。
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