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ミレニアムなローカル線、SL人吉が走る肥薩線で駅弁三昧(到着編)/2009年~2017年

大正時代に生まれた機関車に牽かれたSL人吉、列車名にもなっている人吉駅に到着です。
球磨川の流れと煙を車窓に見ながら旅を続けて、町中に入ると終点人吉駅が近づきます。
人吉駅は、元々鹿児島本線だった肥薩線の交通の要所でした。
湯前線(現在のくま川鉄道)との分岐駅で、鹿児島に向かって県境の山を越えるための機関車の基地にもなっていました。
そんなわけで、今でも広い構内をもった歴史を感じる駅です。
人吉駅でホームに降りると、まず出迎えてくれるのが、今では全国でも数えるほどしかない駅弁の立ち売りです。
「あゆずし~~っ! くりめし~~っ!」の声がするほうを見ると、にこやかに立ち売りをしている姿が!

[いまや、この人が名物ともいえる、人吉駅の立ち売り、菖蒲さん]

この方、菖蒲さんは鉄道ファンや旅好きのなかでは、かなりの有名人です。
写真撮影もばっちり受けてもらえるし、並んで記念写真を撮る人で、列ができることもあります。
列車が出発するときには、見えなくなるまで手を振る姿が感動的です。
駅弁のお店は駅前にあるのですが、やっぱり人吉の駅弁は菖蒲さんから買いたくなります。
ところでこの菖蒲さん、私はここ10年で30回以上人吉駅を訪れているのですが、お休みだったことがありません。
いったいいつ休んでいるんでしょうか?
謎です。
もしも人吉駅で菖蒲さんに会えなかったら、よっぽどツイていないと思って、あきらめてください……。
駅弁大会などの催しで、ときどき各地に行かれるときもあるようです。

[定番の鮎ずし、酢でしめた鮎が爽やかな駅弁]

さて、購入した駅弁。
定番ひとつめは、球磨川名物ということで『鮎ずし』です。
味わいの強い酢めしの上に、開いて酢でしめた鮎がど~んと乗っています。
シンプルかつ贅沢な外観です。
ほろっと崩れる鮎の身と、酢めしを合わせて食べればもう最高。
SLに乗って窓から見た球磨川が浮かんでくるよう。
シンプルながら食べ飽きずに、最後まで楽しめる弁当です。

[もうひとつの定番栗めし、甘めの味付けで山あいの味を堪能できる駅弁]

定番のふたつめは『栗めし』。
切り干し大根の入った混ぜご飯に、大きな栗がごろごろ。
山菜などとともに並んでいます。
ものすごくいい意味で”田舎のごちそう”。
栗はもちろん、全体の味付けが甘めなところもすごくいいです。
『鮎ずし』の緑の青竹風弁当箱、『栗めし』の栗型の赤い弁当箱。
どちらも昭和のころから変わっていない形で、レトロ感も大好きです。
やっぱり良いものは残るんでしょうね。

[山菜かしわめし、くまもんの駅弁箱がかわいくて、有頭エビが大迫力の駅弁]

最後は、比較的最近登場した『山菜かしわめし』。
こちらは、立ち売りでは売っていないこともあるので、駅前のお店で買いました。
弁当箱が、熊本の人気者くまモンです。
鮎か栗か迷いながら店に行ったのですが、ついつい弁当箱にやられてしまいました。
フタを開けると、箱の色に負けず彩り鮮やか。
鶏肉のそぼろがぎっしり敷き詰められたご飯の上に、有頭エビがど~ん!
蛸の甘辛煮がど~ん!
卵焼きや、かまぼこも賑やかです。
揚げ物は、サツマイモとニンジンが入った、やや甘めのもの。
人吉は鹿児島県との県境にも近いためでしょうか。
鹿児島郷土料理の“がね”だと思います。
こちらの弁当も、なかなか満足。
やっぱり、肥薩線は駅弁を楽しむのに最高の路線です。

駅弁に満足したら、私が大好きな蒸気機関車と車庫のお話です!

満腹になったところで、人吉駅まで乗ってきたSLを見に行きます。
人吉駅内には、明治44年に作られた石造りの車庫があります。

[2016年までは屋根がついていて 、石造りの車庫があまりよく見えなかった(2009年撮影)]

近年は、この車庫の前後に延長した屋根や車庫があったために、あまりよく見えなかったのですが、2017年に建設当時の姿に復元されました。

[現在の車庫。(写真のように機関車に近づいて見るためにはツアーに事前予約が必要)]

復元後の車庫はすっきりとしていて、建設当時の姿がよくわかります。
3連アーチ型の石造り車庫は、SLによく似合います。

[明治時代の車庫に大正時代の機関車。ものすごい風景だ]

午後の出発時間が近づくと、ターンテーブルに乗って機関車の向きを変えます。
これは、すぐ近くで見られる、マニアでなくてもお楽しみのイベントです。

[機関車を載せ、ぐるっと回って帰りの準備をするターンテーブル]

機関車が回ると、なんだか楽しい。
ターンテーブルは、タイミングさえ合えば、誰でも予約なしで見ることができます。
鉄道風景も駅弁も、懐かしさあふれる肥薩線の旅でした。

佐々倉実(ささくら みのる)
 鉄道をメインにスチール、ムービーを撮影する“鉄道カメラマン”。初めて鉄道写真を撮った小学生のころから約50年。鉄道カメラマンなのに、列車に乗ると走るシーンを撮影しにくいので、撮影の8割はクルマで移動。そんなワケで1年のかなりの期間をクルマで生活しています。ちなみに、鉄道の他に“ひつじ”の写真もライフワークで撮影中、ときどきおいしいひつじの話も出てきます。
 主な著作に「富士鉄」(講談社)「新幹線ぴあ」(ぴあMOOK)「鉄道ムービー入門」(玄光社)「ひつじがすき」(山と溪谷社)など多数、映像集に「感動の美景鉄道」(MAXAM)「日本の新幹線・特急」(シンフォレスト)など、担当番組に「素晴らしき日本・鉄道の旅」(BS-TBS)など

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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