市販されている日本酒を味わいのみで評価するコンテストが「SAKE COMPETITION」だ。2025年の「SAKE COMPETITION 2025」の総出品数は計1163点。5月初旬から審査が進められ、6月10日に東京・高輪ゲートウェイ駅直結の複合施設「TAKANAWA GATEWAY Convention Center」で表彰式が行われた。式典の様子と受賞結果、受賞蔵の喜びの声を一部お伝えする。
全国から350の酒蔵が参加、11回目を迎えた日本酒のコンペティション
2024年末、伝統的酒造りがユネスコの無形文化遺産に登録され、ますます世界で人気・注目度が高まる日本酒。「SAKE COMPETITION」は、「ブランドによらず消費者が本当に美味しい日本酒にもっと巡り会えるよう、新しい基準を示したい」という理念のもと、日本酒文化の普及を目的に、世界唯一の日本酒だけの品評会として2012年にスタートした。
「SAKE COMPETITION 2025」は11回目。全国から350の酒蔵が参加し、1163点の日本酒が出品された。季節限定やプライベートブランド商品を含め、販売継続中か、2025年内に発売を予定されている商品が審査対象となっている。
「純米酒」、「純米吟醸」、「純米大吟醸」、「Super Premium」、「海外出品酒」の5部門は、技術指導者や有識者、蔵元からなる審査員が予審は28人、決審では20人が参加。部門ごとにシャッフルし、ラベルやボトルの形状で銘柄が判別できないように隠された状態で注がれ、審査が行われた。
今回新設されたモダンナチュラル部門は、伝統的手法と自然との共生で育まれたモダンで洗練された味わいに光を当てるというもの。ソムリエ有資格者でワイン業界を牽引する5人が審査を行った。
オープニング映像で語る審査員たちは実に錚々たるメンバーが揃う。
ソムリエで、ホテル「マンダリンオリエンタル東京」のディレクターオブワインを務める野坂昭彦さんは、「モダンナチュラル」部門について、「評価するポイントはワインと非常に近似するが、ワインと比べると糖分がある分、その味わいの膨らみや旨みの部分だった」と語る。
ソムリエとして2019年の春の褒章で黄綬褒章を受章した中本聡文(としふみ)さんは新部門創設について「伝統的な日本酒の味覚体に、新たな味わいのゾーンが入ってきている。飲み手側は、それの定義分けを模索していかなければ。そういう意味では重要な部門なのでは」と歓迎する。
実行委員長で、「はせがわ酒店」代表取締役社長の長谷川浩一さんは、蔵人たちが丹精込めて作り出した渾身の一献が並ぶこのコンペティションについて、「順位をつけることに賛否はあります。それでも僕は本当の勝者を決めたいと思って始めました。上位になったら、マスコミが駆けつけたり、電話が鳴りっぱなしになって入手困難になったり、一夜でシンデレラになります。コンテストはそうであってほしいし、実際にそうなります」と話す。
表彰式は、国税庁酒類業振興・輸出促進室長の遠山秀治さんの挨拶でスタート。
「日本酒の国内消費数量は、様々な要因により残念ながら減少傾向にありますが、各蔵元の皆様の絶え間ない努力により、品質が非常に向上するとともに、多様な味わいの商品も多く発売されていると感じています。この品評会をきっかけに、国内の消費者の方に改めて日本酒の良さや美味しさを知っていただき、需要の回復につながることを期待したいと思います。その一方で日本酒は、海外での認知度も高まってきており、輸出額は昨年8月以降、9カ月連続して昨年同月比増の状況です。アメリカにおける関税の影響がどうなるかの予断は許しませんが、輸出拡大が継続していくことを大いに期待しています。国税庁としても、ユネスコの無形文化遺産の登録を追い風に、インバウンドへの訴求を含め、日本産日本酒の輸出化促進やさらなる認知度向上に向けた取り組みを一層進めて参ります」と日本酒の未来に期待を寄せた。
出品者たちには当日のこの表彰式まで順位は知らされておらず、自身の酒造りに自信はあるものの、いざ入賞すると驚きを隠せない方々が多数見られた。