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赤い、赤い、見るからに、辛いっ!そう、今回のお題は、痺れる辛さの〈麻〉と、ヒリヒリ系辛さの〈辣〉が渾然一体と化する「麻婆豆腐」。いずれ劣らぬ東西のその味は、爽快なほどの辛さと、その奥に潜む奥深い旨さがカギのようです。 文/門上武司、マッキー牧元 撮影/鵜澤昭彦(東)、ツジノワタル(西)

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今回のお題【麻婆豆腐】

【東】マッキー牧元 四川料理 趙楊の「佳説麻婆豆腐」

 門上さん、僕も麻婆豆腐は、大好物です。店で食べるだけではなく、自分でも頻繁に作ります。あらゆるレシピを試し、自己流に落ち着いたのですが、実はその真価がどこにあるのか、長い間見いだせないでいました。

 その目を開かせてくれたのが『趙楊』です。麻婆豆腐は豆腐をおいしく食べるための料理だという、真実に気づかせてくれたのです。趙楊さんによれば辛さや痺れより、豆腐をどうおいしく感じさせるかが大事であり、そのために豆腐は包丁でなくヘラで切り、決して茹でないと教わりました。また豆腐を芯から熱くして、豆腐の柔らかさと餡のとろみ加減を同じにし、醤油と胡椒は絶対入れてはダメだということも教わりました。

 いままでに、趙楊さんには5種類の麻婆豆腐を作ってもらったことがあるのですが、今回のものは中でも最も感動したものです。

 粗微塵にした羊肉の香りとハードな痺れ、油のしつこくないコク、複雑に絡みあった旨み、その中で豆腐の優しい甘さがそっと花開く。激しさと穏やかさ、逞しさと柔らかさという相反する事象が、美しいバランスをとりながら、丸く収まっている。だからこそ、豆腐を慈しむ気持ちが滲み出る。この味わいは、もはや日本の宝だと思います。

その原点や存在意義を教えてくれる 豆腐による豆腐のための伝説の麻婆豆腐

▲佳説麻婆豆腐(伝説の陳おばあさん第二のレシピ) ※コースメニューの一品
「つるりとした豆腐の口当たりに気を許していると、瞬殺で辛さが襲ってきて油断ならない。しかし次の瞬間、痺れが引いたと同時に豆腐の旨さが最大限に花開く……。うぅ~ん、脱帽です」(牧)

[住所]東京都港区新橋1-5-5 グランベル銀座ビル2 7F
[営業時間]18時〜19時半最終入店(21時半閉店)
[休日]日、祝は不定休
[席]テーブルのみ20席 カード可/サなし
完全予約制 ※インターネット予約 http://pokecon.link/1qFQS5p
[交通アクセス]地下鉄銀座線新橋駅から徒歩1分
※アラカルトなし、コースのみ、「佳説麻婆豆腐」は予約時に要相談。

【西】門上武司 中国酒家 福龍園の「四川超級麻婆豆腐」

 牧元さんもご存知の人ですが、関西には麻婆豆腐研究家を名乗るTVプロデューサーが存在します。年間に100食以上食べるという猛者です。

 今回はその人に相談した結果、双方合致の一軒として挙がったのが大阪・南森町の『福龍園』。日本の麻婆豆腐の嚆矢は陳建民さんが源流ですが、その流れを継承する店でもあります。

 テーブルに麻婆豆腐が届くと、立ち昇る香りが目に届く。まぶたが反応するのです。豆腐のサイズはまちまちですが、相対的に細かい。口に含むと優しい辛さが襲ってきます。

 とろみのある液体と豆腐が喉に差し掛かる頃から、二種類の辛さが口内から喉を覆いつくします。四川の花椒、シナモンなどをブレンドした自家製ラー油が、「効く! 効く!」と叫ぶように訴えかけてくるのです。

 その頃には、額から顔全体に汗が滲んできます。これがなければ、麻婆豆腐を食べる価値がないとまで、思ってしまいます。

 白い御飯との相性も素敵なのですが、このツルリとした喉ごしに、思わず「麻婆豆腐は飲み物に近い」と思ってしまうほどです。

 小さい店ですが、黒板にぎっしり書かれた献立が魅力的。牧元さん、食べ尽しいかがですか?

四川花椒の〈麻〉と自家製ラー油の〈辣〉が体内を駆け巡る 麻婆豆腐の源流を汲む味

▲四川超級麻婆豆腐(スーパーマーボトウフ) 1080円
「唐辛子の辛さより、四川花椒の痺れる〈麻〉の辛さが鮮烈です。そこにかすかな旨みが隠れているのが、陳建一さんの流れを組む味わい。なめらかな豆腐の口当りと肉類の旨みのバランスが見事」(門)

[住所]大阪府大阪市北区天満4-16-8 ハイツ天満宮1F
[TEL]06-6353-7224
[営業時間]昼 11時半~14時半、夜 18時~22時
[休日]日・祝
[席]テーブル8席、カウンター5席、ミニカウンター2席/計15席
カード不可/予約可/サなし
[交通アクセス]JR東西線大阪天満宮駅2番出口から徒歩3分
※四川超級麻婆豆腐は夜のみのメニューです。

プロフィール

マッキー牧元/タベアルキストを自称して早30年、ひたすら美味しいものを食べ歩き、それを生業とすべく、各誌への寄稿に励むコラムニスト。東の食雑誌『味の手帖』編集主幹でもある。
門上武司/小誌でもおなじみの、あらゆる食情報に精通している西のグルメ王。食関連の執筆・編集を中心に、各メディアに露出多数。関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問も務める。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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