日本で独自の進化を遂げて、愛されてきた「カレー」。その進化は様々で、日本で生まれた「蕎麦」と融合したり、中国で生まれた「チャーハン」と手を結んだり。それぞれを存分に楽しめる店をご紹介します。
画像ギャラリーカレーチャーハン
『香妃園』@六本木
・カレー炒飯(1210円)
チャーハンをセットのスープに少量浸して食べると、これまた旨し
58年変わらぬ老舗の味は酒の友にも最適だ
1963年から六本木に店を構える中国料理店。気品漂うクラシカルな内装、ホールスタッフの方はピシッと黒スーツ……というと身構えてしまうが、麺やご飯モノ目当てでも立ち寄りやすい気さくさ。懐深い老舗なのだ。
メニュー数は実に200種類以上。一番人気は「特製とり煮込みそば」だが、「カレー炒飯」を選んだ貴方もお目が高い!
まず惹きつけられるのが牛細切り肉のトッピング。秘伝の醬(ジャン)ダレの味が染みていて、これだけでも紹興酒のアテになりそう。その他の具はグリーンピースや玉ネギなど。頬張ると、クセのないマイルドな辛味が広がる。
なんというか“お家のカレー”を彷彿させる懐かしさ。
この街でひとりメシ(呑み?)の日は、真っ先にこのチャーハンが浮かぶ。
・エビ、貝柱、しいたけの春巻(3本)(1485円)
キツネ色に揚がった細身の春巻。噛むとプリプリの具の食感が弾ける。何本でもいけそう
・特製とり煮込みそば(1430円)
店の代名詞といえる逸品。乳白色のスープは国産鶏のガラやモミジがベース。あっさり薄味なのにコク深く、五臓六腑に染み渡る。するっと入るストレート麺は卵白を加えた特注品
[電話]03-3405-9011
[営業時間]11時45分~翌4時
[休日]日
[交通]地下鉄日比谷線ほか六本木駅5番出口から徒歩2分
『兆徳』@本駒込
・カレー風チャーハン(850円)
フワ・パラの絶妙な食感は、固めに炊く富山産コシヒカリも立役者。チャーハンは全7種類
特製ペーストが味の要 深いコクと余韻に溺れたい
ブワッと立ち上るカレーの芳香を、まずは胸いっぱいに吸い込んでほしい。たまらずひと口。
ふっくらパラリの食べ心地の先には、深いコクと余韻……こりゃ絶品!
「秘密は特製のカレーペーストです」と店主の朱徳平さんがニヤリ。
たっぷりの白絞油で長ネギと玉ネギを炒めて香味を付け、カレー粉と和えて寝かせたペーストを仕上げに投入。
鍋を揺さぶりながらご飯一粒ひと粒に風味をコーティングし、卵や牛挽き肉など、具の旨みも封じ込めていく。
『兆徳』の料理は豪快なのだがその実、素材はすべて国産の良いものを使い、餃子やシューマイなども一つひとつ丁寧。
町中華の名店の名にふさわしい。
・焼き餃子(6個)(450円)
上質な豚肉と野菜の味がぎゅっと凝縮。干しエビの風味がほのかに香る。中華あんがたっぷりかかった「揚げ餃子」も店のスペシャリテだ
[電話]03-5684-5650
[営業時間]11時半~14時半、17時半~23時(土・日・祝~22時)
[休日]不定休
[交通]地下鉄南北線本駒込駅1番出口から徒歩2分
『味坊』@神田
・スープカレーチャーハン(900円)
白湯スープに合わせてカレースパイスの量は控えめにし、均整のとれた味に仕上げる
呑んだ〆でもスイスイ入る 白湯スープとスパイスの妙
神田ガード下で21年目。中国東北料理の店『味坊』は、クミンをたっぷり使った本場同様のラム肉炒めや串焼きが看板。
……なのだが、私は「スープカレーチャーハン」も全力で推したい。
豚骨ベースの白湯スープは、溶いた卵白と片栗粉でとろみをつけたやさしい味。
そのスープを吸い込んだカレーチャーハンが口の中でしっとりほどける。
スパイスの香気がマイルドなので、あっさり味のスープを引き立て、重なり、体にじわーんと染み入る美味しさだ。
丼ぶり満タンのボリュームは大陸系中華ならでは。
それなのに、店のこだわりワインをたらふく呑んで食べた日も、〆に必ず頼んじゃうから不思議です。
・豚バラ肉と白菜漬け煮(980円)
乳酸発酵させた白菜だけで味付けした、東北地方伝統のスープ。茹でた豚バラと春雨がたっぷりで食べ応えがある。寒冷な気候の東北地方では漬物などの保存食を多用するのも特徴
・ラム肉のクミン炒め(980円)
クミンと一味唐辛子の大胆な使いっぷりが店の真骨頂。これを食べて羊肉にハマる人も多い
[電話]03-5296-3386
[営業時間]11時~14時半、17時~23時、日・祝11時~22時
[休日]無休
[交通]JR山手線ほか神田駅東口から徒歩2分
『ラーメンya』@亀戸
・目玉焼きカレーチャーハン(900円)
トッピングの目玉焼きもドーンと2個
並サイズで超大盛り 空の胃袋ロックオン!
思わず「大盛り頼んだっけ!?」と確認してしまった。
この店の並サイズは総重量なんと700g。「昔のチャーハンは、どこで食べてもこの量が普通だったからねえ」とご主人。
店を開いた30余年前と変えず、変わらず、精魂込めて鍋を振るう。しかも、ただ量が多いだけじゃない。
賄い料理からスタメン入りしたカレーチャーハンは味の実力もピカイチ。
食感を残した玉ネギの甘みが、ピリリとくるスパイスと意気投合。
チャーシューダレで煮付けた豚バラやナルトなど、ラーメン屋さんらしい趣向の具もたまらない。
ちなみにガチの大盛りを頼むと、総重量1kgの通称“ヘルメットチャーハン”に挑戦できますぞ。
・麻婆涼麺(780円)
冷水で締めた中華麺に、熱々の麻婆豆腐をたっぷりと。熱、冷、辛が口の中で行ったり来たり。花山椒が利いた本格味だ
・半チャンラーメン(昼950円、夜1000円)
半チャーハンで一般的な並サイズ。醤油ラーメンはニンニクと炒めた背脂でコクをプラス
[電話]03-3682-6296
[営業時間]11時〜15時半、17時〜20時半LO
[休日]日・祝
[交通]JR総武線ほか亀戸駅東口から徒歩10分
カレー蕎麦
『大井更科』@大井町
・マイルドカレー南ばん(990円)
コクがあってクリーミー。チビッコのみならず女性人気も高いそう
マイルドから激辛まで4種類 丼に詰め込んだ老舗の心意気
創業から間もなく100年を迎えるこちらで出すのが、キレッキレのカレー南蛮。
「常連さんから『辛くできないの?』って言われて作っちゃった」とは、3代目のご主人。
“激辛”はブートジョロキアソースで、その下の“大辛”はハバネロソース入り。
ふざけているわけではなく、蕎麦やダシの味を壊さぬよう工夫した最善のチョイスなのだ。
手繰れば、ストレートな辛みの後から、焙煎して香ばしさをまとった本枯節の香りがほわり、
九州産を外二で打った、おだやかな蕎麦の甘みがじわりと広がる。
一方、チビッコ向けの“マイルド”は、牛乳とバターで伸ばしたやさしいお味で、大人でさえもぐっと来る。
老舗の遊び心と矜持をさりげなく詰め込んだカレー南蛮なのである。
・激辛カレー南ばん(1100円)
なめてかかると返り討ちに合うほど刺激的。しかし蕎麦としての旨さもしっかりと感じられ、老舗の実力が伺える
・だし巻き玉子焼き(770円)
少し甘めでやさしい口当たりにホッ。焼酎や日本酒も豊富で、夜は飲み放題付きのコースも
・蕎麦屋が作った塩ラーメン(880円)
4代目考案の新メニュー。鶏ガラベースの澄んだスープと蕎麦が驚くほど相性抜群だ
[電話]03-3774-0002
[営業時間]11時半〜14時LO、17時半〜21時LO
[休日]土の夜、日・祝
[交通]JR京浜東北線ほか大井町駅中央口から徒歩3分
『百そば』@浅草橋
・薬膳カレー蕎麦(880円)
クリーミーからのスパイシーさが後を引く。九条ネギの香りや食感が絶妙なアクセント
ダシと薬膳スパイスが響き合う 個性がキラリと光る至福の味
汁をすすると、最初に感じるのはクリーミーなコク、続いてルウに溶け込んだ野菜の甘みがやってくる。
へぇ〜、マイルド系……と思った直後、一瞬レンゲが止まるほどの辛さが駆け抜けていった!
この緩急をつけた旨さに翻弄され、猛然と食べ進むことになる。
11種類をブレンドしたというエッジの利いたスパイスの香りの中にも、しかと感じるダシの頼もしき風味。
蕎麦は店主が惚れ込んだ北海道産の二八で、もっちり素朴な風情がどこか奥ゆかしい。
具材はなし、薬味の九条ネギだけ。このシンプルさも実にいい。
ご飯と食べたい!の声多数でカレーライスもメニューに加わった。
・漁師丼(500円)
新鮮なスルメイカのヅケと北海道産山わさびの丼。蕎麦のお供に
・雪板蕎麦(880円)
すりおろした山わさびを雪のように散らして。ツンとくる辛さと爽やかな香りが、蕎麦の甘みや香りを繊細に引き立てている
[電話]03-5846-9138
[営業時間]11時〜21時(20時半LO)
[休日]無休
[交通]都営地下鉄浅草線浅草橋駅A6出口から徒歩1分
『蕎麦屋 山都』@代々木上原
・つけ黒カレー(1400円)
香ばしさの中にもカツオ節やサバ節、そして昆布の旨みもしっかり感じられ、次から次へと蕎麦に箸が伸びる
真っ黒いツユの正体は焙煎!大人のビター感がクセになる
一般的なカレー蕎麦のイメージで挑むとたぶん裏切られる。もちろんいい意味でだ。
真っ黒いツユは、軽い衝撃を覚えるほどに香ばしく、そしてほろ苦い。
丹念に焙煎したカレー粉に、これまたじっくり炒めた野菜や果物を合わせ、爽やかな甘みと酸味もダシに溶け込ませた。
そして特筆すべきがやはり蕎麦。更科粉をブレンドして打った十割は、プリッ、コリッと奥歯の方で音が鳴るほど小気味良いコシで、そのなめらかな肌にとろみのあるツユがちょうどいい塩梅に絡みつく。
さらに各地の地酒や焼酎、センスあふれるつまみの品書きもズラリとくれば、やはり蕎麦前から始めたくなる。
・こってり(1000円)
豚の背脂がツユの表面を覆うガッツリ系創作つけ蕎麦。驚くほど大量に降られた黒胡椒が、意外にもツユや蕎麦の風味とマッチする
・ちくわ磯辺揚(650円)
特大サイズを1本丸ごと天ぷらに。衣には生のり、仕上げに青のりと磯の香り豊かに仕上げて、日本酒のお供にもピッタリだ
・マカロニサラダ(650円)
コンビーフを入れるひと工夫によって、味も食べ応えもアップ!
[電話]03-3466-3200
[営業時間]12時〜14時半(14時LO)、18時〜23時(22時LO) ※土・日・祝17時〜22時(21時LO)
[休日]無休
[交通]地下鉄千代田線ほか代々木上原駅南口1から徒歩3分
『ならや』@池袋
・カレー南蛮(1200円)
蕎麦は十割でカレーの強い個性にも負けない存在感。しなやかな細打ちがトロミのある汁によく絡む
王道の1杯に込められた完璧なる味のバランスに脱帽
何の変哲もないけれど、不思議なほどまた食べたくなる味、それがこの1杯なのだ。
一見まごう事なきThe・王道。しかし真正面から向き合うと、普通だけど普通じゃない、
甘み、酸味、コクといったすべての味の要素が完璧なバランスで成り立っていることに気づくはず。
創業は1985年で、当初からあったメニューを年月かけてブラッシュアップ。
ルウには豚の背脂にハチミツ、生クリーム、その他モロモロを緻密に重ね合わせている。
加えて蕎麦も優秀で、熱い汁に浸ってもなお感じる確かなコシに惚れ惚れ。
最後はセットに付くご飯を丼にドボンッで、これまた大正解の旨さを発揮する。
・焼き野菜盛り(800円)
自家製ドレッシングで炒め、それぞれの野菜の滋味を引き出している
・鴨料理三点盛り(1300円)
無投薬&放し飼いした上質な合鴨を仕入れている。パテ、卯の花仕立て、砂肝のコンフィと鴨尽くしを楽しめる
[電話]03-3984-6705
[営業時間]11時〜14時半LO、17時〜20時半LO※日は昼のみ
[休日]月
[交通]JR山手線ほか池袋駅東口から徒歩6分
谷内啓樹(ラーメンya)、中橋正治(百そば、山都)、小島昇(ならや)
取材/林匠子、菜々山いく子(大井更科、百そば、山都、ならや)
※店のデータは、2021年6月号発売時点の情報です。
※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。
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