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チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介! 今回は名古屋市中村区の中華料理店。思い出の味というチャーラーとは。

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ライター修業時代に幾度となく食べた店に久々の訪問

「チャーラーの旅」の旅人である私は、フードライター兼カメラマンが本業。25歳でフリーとなり、四半世紀以上が過ぎた。

23歳のときに2年半ほど勤めた編集プロダクションは、名古屋駅の駅ウラ、あっ、今は駅ウラとは言わないな。新幹線の改札口がある太閤通口。そこから歩いて5、6分のマンションの一室にあった。

勤務時間は10時からエンドレス。今でいうブラック企業だろうが、当時はそんな言葉もなく、出版業界はこんなものだと思っていた。

昼休みは13時から。昼食は近くの喫茶店や洋食店などでとることもあったが、原稿を書いている途中で外出すると、集中力が途切れてしまう。そのため、大半は出前で済ませていた

お昼時になると、「出前、頼もうか」と社長が言い出して、誰かがみんなの注文を聞いて電話をするのだ。

丼物や麺類の他、編プロと同じマンションの1階にある中華料理屋からとることが多かった。支払いは社長。かれこれ、100回以上はオゴってもらったと思う。今思えばありがたいことだ。

『中国料理 華明閣』

先日、かつて編集プロダクションがあったマンションの近くへ行く機会があった。会社はとうの昔になくなっていると風の噂に聞いていたが、ふと、あの中華料理屋はどうなっているんだろうと思い、訪ねてみた。それが名古屋市中村区則武にある『中国料理 華明閣(かめいかく)』である。外観は四半世紀経った今でもまったく変わっていない。

店内に入ると、オーナーとおぼしき方が席に案内してくれた。以前は金ピカのブレスレッドやペンダント、時計を身につけた小柄な老人がオーナーだった。マンションのエレバーターでよく顔を合わせた。高齢のためか、いつも杖をついて歩いていた。

「実は杖に見えるけど、実は仕込み刀なんだぜ、あれ」とか、「実は拳法の達人で、いざというときには俊敏に動く」とか、私たちはよくネタにしていた。そんな思い出が蘇る。

店内も当時のまま。お昼のピークだったこともあり、周辺で働くサラリーマンでごった返していた。厨房からは料理人たちが忙しそうに中華鍋を振る音が聞こえてきた。注文したのは、昼のサービスランチの中から「ラーメン炒飯セット」(720円)。

炒飯。インパクトは今ひとつ。期待が大きかった分だけ残念だった

まず、目の前に運ばれてきたのは炒飯。具材はハムとネギ、卵とシンプル。さすがに25年も経っているので、ビジュアルはよく覚えていない。でも、しょっちゅう食べていたから味は覚えているはずだ。ってことで、ひと口。

あれ? こんな味だったっけ? もっとしっとりとした食感だったような。っていうか、これは明らかに炒めすぎだ。パラパラを通り越してバサバサになっている。これはちょっと残念だったな。

胡椒をかけて楽しみたい、鶏ガラスープのラーメン

いかにも町中華のラーメン。あっさり味がクセになる

炒飯が運ばれてから1分以内にラーメンが着丼。そうそう、当時もスープはこんな感じの澄んだ色をしていた。まずは麺を食べてみる。

これこれっ! 醤油辛くなくて、鶏ガラのだしがしっかりときいた、この味! うわぁ、めっちゃ懐かしい!

ラーメン専門店ではコショウを使うことは滅多にない。それはコショウが要らないような味に仕上げてあるからだ。でも、中華料理屋でラーメンを食べる場合は遠慮なく使う。コショウをドバーッとかけて食べるのが流儀と思っているくらい(笑)。

ここのラーメンも例外ではなかった。コショウをかけるとスープの味が引き締まって実に旨い。コショウの香りが立ち上る湯気とともにふわっと香るのもよい。味のインパクトがやや弱かった炒飯は、コショウをかけたラーメンのスープをすすりつつ完食した。

27年前、あのマンションの一室で馬車馬のように働いていた仲間たちは元気でやっているのだろうか。無性に会いたくなった。

撮影・文/永谷正樹

『中国料理 華明閣』のチャーラー

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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永谷正樹
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