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2020年、重要文化財に指定 記念特別展を開催

東武鉄道の社長などを務め、”鉄道王”とも呼ばれた実業家・根津嘉一郎(1860~1940年)のコレクションに端を発し、様々な美術品を保存してきた根津美術館。日本・東洋古美術を中心に、扱う分野は多岐にわたります。

そんな根津美術館の所蔵品の一つ、鈴木其一『夏秋渓流図屏風(なつあきけいりゅうずびょうぶ)』が2020年、重要文化財に指定されました。それを記念し、11月3日から重要文化財指定記念特別展「鈴木其一・夏秋渓流図屏風」が始まっています。

其一最大の異色作『夏秋渓流図屏風』

展示の目玉となる鈴木其一(1796~1858年)は、「江戸琳派」の代表的な絵師として知られています。江戸琳派の開祖として知られる酒井抱一(さかい・ほういつ、1761~1828年)の高弟でありながらも、江戸琳派の作風にとらわれない個性的な作品を生み出しました。その代表作が、今回展示された『夏秋渓流図屏風』です。

『夏秋渓流図屏風』 鈴木其一筆

重要文化財『夏秋渓流図屏風』(左隻)鈴木其一筆
日本・江戸時代 19世紀
根津美術館蔵

重要文化財『夏秋渓流図屏風』(右隻)鈴木其一筆
日本・江戸時代 19世紀
根津美術館蔵

『夏秋渓流図屏風』では、一見すると、琳派の大きな特徴である装飾性やデザイン性を強調した作風から逸脱し、写実的な風景が描き出されているように思われます。しかし、その一方で細部においては、青々とした渓流の流れに金を用いる色づかいや、緻密に描かれた百合に対しての単純化された笹など、デザイン性の高い非現実的な描写がみられます。写実的な技法とデザイン的な技法が混ざり合うことで、どこか幻想的な世界を想起させるような作品になっています。

『夏秋渓流図屏風』誕生の背景とは

そんな奇妙な魅力を放つ『夏秋渓流図屏風』は、一体どのように生まれたのでしょうか。

展覧会では、師の抱一や尾形光琳(おがた・こうりん、1658~1716年)をはじめとして、円山応挙(まるやま・おうきょ、1733~95年)や谷文晁(たに・ぶんちょう、1763~1840年)、古い時代の狩野派などの作品を展示し、彼らの作風がどのように其一の「奇想」に取り入れられたのかを探ります。

『花木渓流図屏風』山本素軒筆

『花木渓流図屏風』(左隻)山本素軒筆
日本・江戸時代 17~18世紀
個人蔵

『花木渓流図屏風』(右隻)山本素軒筆
日本・江戸時代 17~18世紀
個人蔵

花木渓流図屏風(かぼくけいりゅうずびょうぶ)』は京都の狩野派の画家である山本素軒(やまもと・そけん、?~1706)によるものです。尾形光琳が技法を学んだという説もある素軒の作品からは、色使いや構図など、どことなく其一の『夏秋渓流図屏風』と通じるものを感じます。

『保津川図屏風』円山応挙筆

重要文化財『保津川図屏風』(左隻)円山応挙筆
日本・江戸時代 寛政7年(1795)
株式会社千總蔵

重要文化財『保津川図屏風』(右隻)円山応挙筆
日本・江戸時代 寛政7年(1795)
株式会社千總蔵

其一にも少なからず影響を与えたと言われる円山応挙の晩年の大作として知られているのが、この『保津川図屏風(ほづがわずびょうぶ)』です。屏風の左右から中央に向かって川が流れる構図は、『夏秋渓流図屏風』のそれと似通っており、画風は異なるながらも、共通点が見て取れます。

上記のほかにも、抱一が描いた『青楓朱楓図屏風(せいふうしゅふうずびょうぶ)』や『夏秋草図屏風(なつあきくさずびょうぶ)』、其一が西日本を旅した際の記録『癸巳西遊日記(きしさいゆうにっき)』(鈴木其一原本、鈴木守一写)など、貴重な作品が数多く出展されており、中には本展覧会で初めて公開されるものも。この貴重な機会に、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

開催概要

重要文化財指定記念特別展「鈴木其一・夏秋渓流図屏風」
【主催】根津美術館(東京都港区南青山6-5-1)
【期間】2021年11月3日(水・祝)~12月19日(日)
【開館時間】10時~17時(入館は閉館30分前まで)
【休館日】月曜日
【交通】地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅から徒歩10分

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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おとなの週末Web編集部
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