【問題】 春になると取り沙汰されるのが花粉症。ニュースでも必ず話題となり、もはや春の風物詩の感がありますが、実は年間を通じて発症のリスクがあります。花粉症を引き起こす植物は日本では50種以上報告されており、花粉の飛散時期…
画像ギャラリー【問題】
春になると取り沙汰されるのが花粉症。ニュースでも必ず話題となり、もはや春の風物詩の感がありますが、実は年間を通じて発症のリスクがあります。花粉症を引き起こす植物は日本では50種以上報告されており、花粉の飛散時期がそれぞれ異なるからです。
しかし代表的なものはスギで、花粉症全体の約70%を占めると推察されています。(参考[1]p1)
地域にもよりますが、スギ花粉の飛散時期が2月~4月頃となるため、「花粉症は春」という印象が定着しています。
ところで、食材の中には、花粉症の人が食べるとアレルギー反応を引き起こす可能性があるため、避けた方が良いものがあります。そのような食材は花粉の種類により異なりますが、「スギ花粉症」の場合、避けた方が良いものは、以下のどれでしょうか?
(1)ニンジン
(2)キュウリ
(3)トマト
(参考)
[1]「花粉症の正しい知識と治療・セルフケア」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/dl/ippan-qa_a.pdf
答えは次のページ!
【答え】
(3)トマト
花粉症の人が特定の果物や野菜を食べると、唇がはれたり、口の中やのどに刺激感を覚えたりすることがあります(口腔アレルギー症候群)。(参考[2])
これは、花粉に含まれるアレルゲン(アレルギーの原因物質)と、果物・野菜に含まれるアレルゲンの構造が似ていることが原因で、花粉症の人の約1割が発症すると言われています。
スギ花粉症の人が口腔アレルギーを起こす可能性があるのはトマトです。ただし、トマトのアレルゲンは熱や消化酵素に弱く、トマトケチャップや加熱したトマトではアレルギーは起こらないとされています。
また、(1)のニンジンで口腔アレルギーを起こす可能性があるのはシラカバ花粉症やヨモギ花粉症、(2)のキュウリで口腔アレルギーを起こす可能性があるのはブタクサ花粉症です。(参考[3])
(参考)
[2]口腔アレルギー症候群(一般社団法人日本アレルギー学会)
https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=14
[3]「食物アレルギー診療ガイドライン2016 ダイジェスト版」(日本小児アレルギー学会)
https://www.jspaci.jp/allergy_2016/chap11_2.html
食べ物で花粉症は治せるの?
食事で免疫力を高める
前述のように、花粉症の人が食べるとアレルギーを引き起こす可能性があると証明されている食べ物はあります。一方で、花粉症の症状が改善される可能性があると証明されている食べ物というものはありません。
ただし、健康を保ち、免疫機能を調整することで、花粉症の改善効果が期待される食べ物はあります。それは、腸内環境を整える作用のある食物繊維や乳酸菌、発酵食品です。(参考[4])
(食物繊維)海藻類、根菜類など
(乳酸菌)ヨーグルト、漬け物など
(発酵食品)納豆、ヨーグルトなど
どのようなものを食べるかとともに、どのような食事をするかも大事です。不規則な食事や偏った食事は免疫力を低下させることに繋がるため、規則的でバランスの良い食事を心がけることが大事です。
食べて治す 経口免疫療法
医師指導のもと、アレルギーの原因となる食物を少量ずつ経口摂取し、耐性の獲得を目指す治療法を「経口免疫療法」といいます。ただしこの方法は、一部の症例には治療効果はありますが、予期せず危険状態(アナフィラキシー)に陥ることがある、経口免疫療法を修了した後にも症状が発症する場合があるなどの課題があり、まだ研究段階です。(参考[5])
ちなみに、花粉症の治療法には、くしゃみや鼻詰まりなどの症状を抑える「対症療法」と、完全に発症をなくそうとする「根治療法」とがあります。(参考[6]p8)
経口免疫療法は根治治療ですが、スギ花粉症の場合、効果の認められた以下の2つの根治療法があり、いずれも保険診療の対象となっています。
(1)皮下免疫療法
スギ花粉から抽出したエキスを注射で投与する方法です。
低い濃度から始め、徐々に濃度を高めていき、花粉抗原に対する免疫を獲得させます。
平成22年度の厚生労働省の研究結果では、軽症、無症状に収まった患者が80%以上、2年以上続けた後にやめた場合でも、約70%の患者で効果が持続することが確認されました。(参考[6]p10)
(2)舌下免疫療法
スギ花粉エキスを含む錠剤または液剤を舌下に含んで数分保持し、その後飲み込む方法です。
皮下免疫療法と根本原理は同じですが、アナフィラキシーショックが少ないなどの利点があります。(参考[6]p11)
(参考)
[4]「花粉症とアレルギーの関係 よい食べ物と気をつけたい食べ物」dヘルスケア(株式会社NTTドコモ)
https://health.dmkt-sp.jp/column/health/0439
[5]経口免疫療法(食物アレルギー研究会)
https://www.foodallergy.jp/care-guide/oral-immunotherapy/
[6]「的確な花粉症の治療のために(第2版)」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000077514.pdf
出題:三井能力開発研究所 代表取締役 圓岡太治
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