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クッキングパパにも登場! 「モカ」に隠された知られざる意味と歴史 

クッキングパパ 「COOK.74 入魂の1杯 おいしいコーヒーをいれよう!!」より。本話で注がれる一杯には心温まる「想い」も隠されている

ところで、荒岩主任(当時)が買い求めたコーヒー豆は、「モカマタリ」という種類です。上品な酸味と芳醇な香りのモカフレーバーが特徴的なこちらは、アラビア半島南西に位置するイエメン産のものです。

コーヒー豆と言えば、ブラジル産やエチオピア産などがよく知られていますが、イエメン産は、口にする機会が少ないかもしれません。しかし、調べてみると、イエメンはエチオピアと並び、コーヒー発祥の地と称されています。

砂漠地帯に隣接するイエメンでは、起伏に富んだ地形を生かして500年以上前から山岳地帯の段々畑でコーヒー豆が栽培されています。いまでも大量生産ではなく、伝統的な農法で丁寧に作られているため、希少価値があります。

15世紀後半になると、飲酒を禁止されているイスラム教徒の間で、コーヒーの飲用が広まったと言われています。ちなみに「モカ」とは、紅海に面するイエメンの貿易港の地名で、対岸のエチオピア産の豆とともにここから世界に向けてコーヒー豆が輸出されていきました。やがて、コーヒーはさまざまなフレーバーが生まれ、いまや最も世界中で愛されている飲み物になりました。

「おいしいコーヒーのいれ方」 麻布中の入試問題で問う意味とは

「おいしいコーヒーのいれ方」を科学的に考察しているのは、前回「第6回目/ミソ汁」でも取り上げた私立麻布中学校(東京)の2019年理科の入試問題です。

焙煎の度合いに応じて、コーヒーの苦味や酸味がどのように変化するのか、コーヒーミルのハンドルを回すスピードで味がどう変わるのか、エスプレッソのいれ方など教科書では教えてくれない設問がズラリと並んでいます。つまり「知識があるかないか」ではなく、ふだんの生活で身近な事柄に「好奇心を持っているかどうか」が問われているのではないでしょうか。

子供ばかりでなく、大人になっても好奇心を持ち続けて、新たな学びに励む――4月は特にそういう気にさせてくれます。

最後に、荒岩主任はなぜ、希少な豆を買い求め、こんなにも丹精込めてコーヒーをいれたのか――。格別な1杯をお供に、ぜひこの章をじっくり味わってみてください。

※現在は当時の状況と異なる場合があります。

文/中島幸恵、漫画/うえやまとち、メイン画像/kai-Stock.Adobe.com

◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。
週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年1月現在、単行本は160巻。

※「おとなの週末Web」の記事では本稿紹介の漫画、クッキングパパ 「COOK.74 入魂の1杯 おいしいコーヒーをいれよう!!」 を一話丸ごと読むことができます。

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中島幸恵
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