商業施設「横浜ハンマーヘッド」にある『セブン-イレブン』が、クラフトビールショップ顔負けのラインナップで「#狂ったセブン」と言われている。クラフトビール好きの私、編集えびすが、ずっと気になっていたセブン-イレブンに突撃。本誌「瓦版」で紹介した記事の完全版です。
画像ギャラリー国内外のクラフトビールが店内にズラリ!
クラフトビール好きとして、一度は訪れたいと思っていた「横浜ハンマーヘッド」の『セブン-イレブン』。どうやら相当な数のクラフトビールを取り揃えているということで、2022年4月に取材で横浜に行った際、念願の訪問を果たした。
入ってビックリ。お店の奥と左手にクラフトビールが入った冷蔵庫がズラリ! 想像以上の多さに正直圧倒された。国内、海外の缶ビール、そして瓶ビールが店内の至る所に配置されていて思わず「おぉ、すげぇ」と口をついて出た。
もちろん、通常の商品も置いてあるし、商業施設内のコンビニだからか、横浜土産もちらほら。そこに混じって、ブルワリーさんのグッズがしれっと置いてあるのも面白い。コンビニってそもそもなんでも売っているような場所だから、これでいいのだ。
店内をぐるっと見回ったあと、改めてビールを見ていると国内のクラフトビールコーナーで足が止まった。大好きな静岡・沼津の「リパブリュー」や、最近注目している大阪・西成の「ディレイラ ブリューワークス」の缶があってテンションアップ!
いくらでも買い物カゴに入れたくなる衝動に駆られるが、電車で持って帰るには限りがある。そこはグッとこらえて6本に絞って購入した。
6本の“戦利品”については、後述するとして、なぜ『セブン-イレブン』に、ここまでクラフトビールが揃っているのか。後日オーナーの中山さんに話を伺った。
ビールがあまり飲めないオーナーが目指す日本一への道
まず驚いたのが、これだけのクラフトビールを揃えているからさぞかしビール好きだろうと思っていたら、むしろその逆だったこと。
「ビールはあまり飲んでいなくて、大手メーカーさんの生ビールをたまに飲むくらいでした」
では、なぜクラフトビールに目をつけたのか。それは、2019年10月のオープン時期にさかのぼる。予想よりも売り上げが伸びなかった上、コロナ禍に突入。苦戦が続く中で、よく売れていたのがアルコール類だった。横浜ハンマーヘッドにはテラスがあることから、お酒を買って飲む人が多かったのだ。
「素人感覚で、外で瓶ビールを飲むと美味しいのではと考え、取引のあった会社に、海外の瓶ビールのラインナップを聞いて仕入れました」
そして、横浜が日本ではじめてビールの醸造所が誕生した地ということで、地元のブルワリー「横浜ビール」のビールも扱いはじめた。さらに、アメリカンクラフトビールショップ『アンテナアメリカ』を展開する、横浜の輸入販売会社ナガノトレーディングとも取引を開始。『アンテナアメリカ』に通って勉強を重ねた。
「仕入れ額は大手メーカーのビールより高くなるのでリスクはあるけど、ここまできたら日本一ビールを売るコンビニになってやろう! と決めたんです」
そこからは猪突猛進。「横浜にクラフトビールをたくさん置いているセブン-イレブンがあるらしい」と評判を呼び、インポーター(輸入元)からお店にやってくるようになったそう。こうして取引先が増えていき、気づけば最大で500種類のクラフトビールを取り扱うようになった。
「無知だからこそジャケ買いで仕入れつつ、トレンドもキッチリおさえていたら、多彩なラインナップになってきました。今では少ないときでも常時300種類は販売しております。
当店を訪れる方は、クラフトビールの知識がなかったり、ビールは好きでないけど買ってみようかなという方が多いです。エール系をはじめ、クラフトビールにはさまざまなスタイルがあるので、当店にいらっしゃれば好みの味に出合えるはず。クラフトビールを嗜む入り口として楽しんでいただけたらうれしいです」
購入した“戦利品”6缶レビュー
では、今回僕が購入したビールをご紹介。お店では随時ビールのラインナップが変わるため、販売していないものもあるので、ご了承を。
【リパブリュー「69IPA」】
ようやく飲めた、静岡県沼津市のブルワリーによる缶ビール。こちらは定番のIPA。69というのは、IBA(苦味の基準)の数値。一般的な日本のビールで20前後なので、数値は高め。
しかしながら、最初に柑橘系の複雑な香りがガツンとくるので、数値ほど苦みが気にならずむしろ程よいくらい。アルコール度数7%を感じない飲みやすさだ。やっぱり、リパブリューのビール好きだなぁ。
【ディレイラブリューワークス「アイズオブザタイガー」】
大阪市西成区のブルワリーの一本。フルーツウィートエールというスタイル。ウィートエールというのは、小麦を使った上面発酵のエールスタイルで、こちらはフルーツベース。
パイナップル、マンゴーのトロピカルな香りが飛び込み、口当たりはとろり。かなり独特だが、これもまたクラフトビール。嫌いじゃない。ホップの苦みが少ないので、ビールが苦手でも飲めそう。
【ナンバーナインブルワリー「ハンマーヘッドエール」】
実はこちら、横浜ハンマーヘッドの1階、セブン-イレブンの横で作られているブルワリーのビールである。アルコール度数4%ということもあり、軽い飲み口。のど越しもよく、大手メーカーのビールは好きだけどクラフトビールは……という人に飲んでいただきたい“入門編”的な一本。
ニュージーランド産ホップの華やかな香りと麦芽の程よい味わいで飲みやすく、暑い日に風に吹かれながら飲むと最高!
【Be Easy Brewing「東北6ホップHAZY IPA」】
青森県弘前市のクラフトビール工房による一本は、東北6県にちなんで6つのホップを使用したヘイジーIPA。
柑橘系の香りが華やかで、ジューシーな味わい。飲んだあとスッと引いていく中で、柔らかな苦みが感じられた。缶に記載したペアリングにはグリーンカレーがあったが、ココナッツ系と合うのだろうか。
【PINTHOUSE「インペリアルゼリーフィッシュヘイジーダブルIPA」】
どうしても国内のクラフトビールを買いがちなので、海外モノも買わねばと物色した際、缶に書かれた「野村」を見てジャケ買い。アメリカ・テキサス州のブルワリーの一本だ。
スタイルは「ヘイジーインペリアルIPA」。多量のホップならではのジューシーさとトロピカルな味わいは、ザ・ヘイジー。それにモモのような風味もある。トロピカルさゆえアルコール度数9.5%であることを忘れて、キュッと飲んでしまった。
【ジャッキーオーズ「フークックスフォーユー」】
店内に掲示されていた「ビール人気ランキング」で1位を獲得していた商品。ブルワリーはアメリカ・オハイオ州「ジャッキーオーズ」。スタイルは「ダブルドライホップヘイジーペールエール」というもので、ここまでくると説明が大変なので割愛!
グレープフルーツの酸味と、オーツ麦の柔らかいのど越しで、濁りがかった見た目以上にスッキリと飲めた。
【おまけ】つた金「焼き海苔」
ちなみに、ビールだけでなく横浜土産として、出川哲朗さんの実家である海苔店「つた金」の焼き海苔も購入した。
コンビニで何千円も使うアトラクション感
セブン-イレブンであれだけの数のビールを眺めながら買えるのは本当に楽しかった。横浜に行く際はまた伺いたい。ビール好きならば楽しめる夢の空間であることは間違いない。
「コンビニで会計が何万円になるほど買い物をすることは、あまりないと思います。それってひとつのアトラクションじゃないかなと思っています。お客さんもそれを楽しんでいて、『セブン-イレブンで10000円も使っちゃった』と、レシートをSNSにアップされる方もいるそうです。
また、購入したビールをテラスで飲むことを『ハンマー飲み』と呼ばれていて、こちらもSNSで投稿いただいてるみたいで、うれしい限りです」
「ハンマー飲み」も楽しければ、セブン-イレブンの横には、前述のナンバーナインブルワリーのビールを生で楽しめるレストラン『QUAYS pacific grill(キーズパシフィックグリル)』もある。クラフトジンの扱いもあるので、ビールを買う前後に立ち寄るのも一興だ。
■セブン-イレブン 横浜ハンマーヘッド店
[住所]神奈川県横浜市中区新港2-14-1
[営業時間]24時間
[休み]無休
[交通]みなとみらい線馬車道駅から徒歩10分、みなとみらい駅から徒歩12分
取材・文/編集部えびす
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