オムライスに、胸を射抜かれた!
さぁバス通りを戻っていよいよ「グルメの本番」と行きましょう。
バス停、一つ分だけ戻るとさっきの道中、見つけた飲食店の並ぶ一画に。どれにしようかなぁ。かなり悩んだ。特に一番左の居酒屋さん。昼間はランチもやっていて、「焼き鳥丼」の表示にかなり惹かれたが、やはり「定食」の大書きに負けて真ん中の「いまはな」へ。看板にあった「オムライス」の文字に胸を射抜かれました。
前回の「商店街編」、第3回の北新宿でオムライスを食べ損ねてたし、なぁ。今回こそ、の思いも私の背中を押してくれたわけです。
店内はモロ、昭和の喫茶店風。壁一面に色んなメニューが貼り出され、「本日のおすすめ」のホワイトボードも。そこにあった「中盛かつカレー」840円は、(通常のかつの量の2倍)と添書きがあって、「中盛」なのにどんなんじゃ!? と気になったけど、ここは初心貫徹でオムライスを注文しました。少食ですしね。ただし普通は740円だけど、せっかくなんで「おすすめ」にあった、100円増しのデミグラがけを、と、ちょっと贅沢。
すると出て来たのが、これですよ。
おおぅ〜、卵はふわふわ。そこにたっぷりかかったデミグラスソースが、ちょっと苦味を帯びる豊かな風味で、全体を柔らかく包み込んでくれる。
ちょっとオムレツを割って中を覗くと、一般的なケチャップたっぷりのチキンライスではなく、こっちを炒める際にもデミグラスソースを使ってるみたい。いやぁ〜、本当に贅沢だわ。100円、奮発してよかった!
ライスは本格西洋料理なのに、添えてあるのは純和風の味噌汁、というのもいいですねぇ。これぞ昭和。店内から料理から、云十年タイムスリップしたような体験でした。
元々はあんなヘンな境界線さえなけりゃ、こっちの方面に来ることなんてまずなかった筈。そしたらこのオムライスにも出会ってなかったわけですよ。
そう考えると巡り会いって、ホントちょっとした運命の連なりなんですね。世田谷区さん、三鷹市さん、あの境界線はずっとあのまんまにしといて下さい。
『いまはな』の店舗情報
[住所] 東京都世田谷区北烏山7-30-32
[電話]非公開
[営業時間] 11時半〜15時、17時〜21時半
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で、営業時間や定休日は異なる場合があります。
[休日]不定休
[交通]京王井の頭線久我山駅から徒歩約22分、京王線千歳烏山駅から徒歩約23分
西村健
にしむら・けん。1965年、福岡県福岡市生まれ。6歳から同県大牟田市で育つ。東京大学工学部卒。労働省(現・厚生労働省)に勤務後、フリーライターに。96年に『ビンゴ』で作家デビュー。2021年で作家生活25周年を迎えた。05年『劫火』、10年『残火』で日本冒険小説協会大賞。11年、地元の炭鉱の町・大牟田を舞台にした『地の底のヤマ』で日本冒険小説協会大賞を受賞し、12年には同作で吉川英治文学新人賞。14年には『ヤマの疾風』で大藪春彦賞に輝いた。他の著書に『光陰の刃』『バスを待つ男』『バスへ誘う男』『目撃』、雑誌記者として奔走した自身の経験が生んだ渾身の力作長編『激震』(講談社)など。
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