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懐メロ・シンガーになりたくない

1990年代初期、40代を越えた沢田研二に、何故アルバムを作り続け、ツアーを続けるのか訊いたことがある。

“ぼく自身の年商がいくらかある。そのうち3割か4割がアルバム制作やツアーなどの費用に消えてゆく。その部分は殆ど赤字と言ってもいいんだよね。音楽をやり続けるために、テレビに出たり、舞台、映画、CMなどをやっているみたいなものだけど、それができる限り、アルバムを作って、ライブをやってゆくつもりなんだ”。そう、彼は答えた。

“もう随分と減ったかも知れないけど、タイガース、PYG、ソロ、その間ずっとぼくの音楽を支持し、ファンでいてくれる人がいる。ジュリー人気でない、ぼくの音楽の支持者。そういった人たちのお陰で、現在のぼくがある。そういう人たちを裏切りたくないんだ”とも語っていた。

“格好良すぎるかも知れないけど、ぼくはいわゆる懐メロ・シンガーになりたくないんだ。たとえそれでお金が入ってくるとしても…”

そう語った“ジュリー”いや沢田研二は、正しくロック・ミュージシャンの顔をしていた。売れ続けることより、人間“沢田研二”は、ロック・ミュージシャンであり続けることを選んだのだ。

沢田研二のアルバムの数々

岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。最新刊は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)。

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