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国内外のアーティスト2000人以上にインタビューした音楽評論家の岩田由記夫さんが、とっておきの秘話を交えて、昭和・平成・令和の「音楽の達人たち」の実像に迫ります。今回から登場するのは、世界で最も成功した女性アーティストとして知られ、現在も音楽シーンの先端を行くマドンナです。1984年のセカンド・アルバム『ライク・ア・ヴァージン』の大ヒットでスターの座に一気に上り詰め、2008年には「ロックの殿堂」入りを果たした“クイーン・オブ・ポップ”。2022年は、レコードデビューから40周年にあたります。筆者が、この世界の歌姫に東京で逢ったのは『ライク・ア・ヴァージン』の世界的ヒットの直後のこと。マドンナが明かした「まるで夢のような成功の理由」とは―――。

1985年1月の東京、ホテルオークラのスウィート・ルーム

マドンナと初めて逢ったのは1985年1月のことだった。虎ノ門駅に程近いホテルオークラの駐車場に当時の愛車BMW325を滑り込ませて、インタビュー用のスウィート・ルームに赴いた。スウィート・ルームは10坪強の広さだったろうか。アンティークなソファー、テーブルが置かれていて約束の時間通りマドンナはそこに座っていた。テーブルにはぶどうなどフルーツが盛られた皿があった。

ぼくは部屋に入ると立ち上がってフレンドリーに迎えてくれた。初来日当時、セカンド・アルバムからのシングル「ライク・ア・ヴァージン」が全米シングル・チャートで彼女にとって初のNo.1となっていた。まずはそのことを祝福した。彼女は“素晴らしいことだ”と応じた。

多くの音楽ライターはミュージシャンをインタビューする時、音楽の話しかしない。ミュージシャン側もプロモーションになるからインタビューを受けるので、インタビューがニュー・アルバムの話で完結するなら、それにこしたことはない。ただ、ミュージシャンによっては新作のプロモーションとして何度も異なるインタビューワーから同じ質問をされて飽きている人も少なからず存在する。このミュージシャンが新作の話をしたいのか、それとも新作に関しては触れる程度で、他の話をしたいのか、瞬時に判断して、どんな話をするのかを決めるのもインタビューワーの力量である。

「スピリットを追い続けたから」「1日に2000mは必ず泳ぐ」

ぼくが初めて間近に見たマドンナは身長160cmもないような、思ったよりずっと小柄だった。そして何よりも、同じ話ばかりするのに倦んでいたように見えた。そこでぼくは、このインタビューは音楽の話は少なめにして、できるだけ世間話にしようと即座に決めた。そして、まずは何故に夢のような成功を得られたか訊ねた。

“多くのアメリカ人は物質を追っている。お金、大きな家、高級な車…。私はまだ無名な頃から、皆が物質を追うなら違うことをしようと決めた。その答えがスピリットだった。物質とは反対側にあるスピリットを追い続ければ、自然と物質は入って来ると気づいたの。どんなに苦しくとも、スピリットを追い続けた。そして今の私がいる”

では、スピリットを追い続けて今の貴女がある。何か恐れは無いかと訊ねた。それに対し、“怖いのは老いることね。肉体の老い、スピリットを追い続ける心の老い。それが怖いの。だから私は毎日、トレーニングして泳いでいるの。1日に2000mは必ず泳ぐ。どんなに前夜が遅くなっても必ず早起きして、トレーニングして泳ぐ。それを欠かす日は無い。日本に来るに当たって、当初はここじゃなくて他のホテルをオファーされた。でも私のスタッフが調べたら、このホテルのプールが一番プライバシーを守れると助言してくれた。それでここに泊まると決めたの。毎朝ランニングして、プールで泳いでいるわ”

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「ふたりで世界情勢でも話しましょうか(笑...
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