「ふたりで世界情勢でも話しましょうか(笑)」
当時のマドンナは26歳。34歳だったぼくよりずっとしっかりしているのに驚かされた。アメリカは物質の国だからスピリットを追うことで物質は入って来るという発想を無名時代~恐らく20代初めには持っていたのだ。
そういった話をしているとマドンナがぼくに質問して来た。“日本に来て、毎日ニュー・アルバムの話をしている。同じ話ばかり(Fuckin’Talkと言った)。で、あなたはこんな話でいいの?”。それに対しぼくは”アルバム『ライク・ア・ヴァージン』は何度も聴きました。だから、このまま話を続けていいですか?”と答えた。
“もちろん、いいわ。同じ話ばかりで退屈していたから、ふたりで世界情勢でも話しましょうか(笑)”。そういってマドンナは微笑んだ。目の前にいるのはグリーン中心の肌も露わなファッションの美しいイタリア系の血をひく美女。そんな彼女とプライベート・トークはこうして始まったのだった。
岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。