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SFで時代劇で医療ドラマでサスペンス

90年代、平成になると、武道家の青年・龍が日本と中国を股にかけて活躍する大河ロマン『龍-RON-』の連載が始まる。この作品は構想20年、村上さんの子供のころからの中国大陸に対する関心と憧れから生まれた作品だ。なんと連載は16年に及び、村上さんの中では最長の作品となった。

そして、2000年代に入ると、村上さん最大のヒット作『JIN-仁―』がスタートする。現代の脳外科医・南方仁が幕末にタイムスリップし、激動の時代に翻弄されながら、目の前の患者を救うべく全力を尽くしていくという物語だが、SFであり、時代劇であり、医療ドラマであり、サスペンスでもあるという極上のエンターテインメント作品になっている。

この漫画を原作とするテレビドラマも大ヒットし、コロナ禍での再放送も高視聴率を記録して話題となった。

2010年代には、村上さんが子供の頃、熱心な読者だったという、満州育ちの少女漫画家・上田トシコの生涯を描いた伝記的漫画『フイチン再見!』で、『龍-RON-』とはまた違った、女性の視線からの戦中戦後史を描いた。

この作品からはペンで描いた原稿をデジタル加工して入稿されている

そして、現在は、幕末の大阪で、アイヌの血を引く医師が未知の感染症と戦う『侠医冬馬』を「グランドジャンプ」誌上で連載中だ。

ざっと駆け足で、村上もとかさんの50年の仕事の一部を追ってみたが、この漫画家が、いかにバラエティに富んだ題材に挑んできたのか、そして、ストーリーテラーとしていかに優れているかが、おわかりいただけたと思う。

日本漫画界には綺羅星のごとくのヒット漫画家たちがいるが、これほど太く長い漫画家人生を送ってきた方はめったにいない。もっともっと評価されていい漫画家だろう。

展覧会場の弥生美術館を訪れた村上もとかさん

今回の展覧会の特徴は、展示された原画に、村上さんの当時の思いや作画の背景といった、村上さん自身による解説が加えられていることである。この解説によって、ヒット漫画が生み出されている背景を覗き見るような趣きがあり、展示を見ながらドキドキワクワクが止まらなくなる。そして、『六三四の剣』や『龍-RON-』といった若い頃に読んだ作品をもう一度読みたくなる。

昭和から漫画ファンだけでなく、『JIN-仁-』のドラマの再放送しか観ていない若い方々にもぜひおススメの展覧会です。

「デビュー50周年 村上もとか展 『JIN−仁—』、『龍—RON−』、僕は時代と人を描いてきた」

9月25日(日)まで。休館日/月曜日[ただし9月19日(月・祝)開館、9月20日(火)休館]

午前10時〜午後5時(最終入場午後4時30分まで)

弥生美術館  〒113-0032 東京都文京区弥生2−4−3  電話 03-3812-0012

https://www.yayoi-yumeji-museum.jp

「村上もとか展」にはどうしても行くことができないという方のためには、この展覧会のカタログとして出版された単行本「村上もとか 『JIN-仁-』、『龍-RON-』、僕は時代と人を描いてきた」(河出書房新社)がおすすめです。

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おとなの週末Web編集部 今井
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