説教の最中、ピラフにタコを追加!?
「会長! お久しぶりで~す」。ママさんが声をかけてきた。
「ヤァ久しぶり。コーヒーふたつお願いね! あと鵜澤君ピラフ食べるか?」
「いただきます!」。食いしん坊の俺はすかさず言った。
「じゃ。ピラフもふたつお願~い!」。会長は注文を手早く済ますと俺の方を見て、「鵜澤君、あまり無理を通すと道理が引っ込むよ」と俺を諭した。
「仰るとおりです、以後自重します」。ごり押しした本の貸し出しのことである。
「うむ、福地さんも困っておったぞ。あまり、無理を言ってはいかんよ」
「はぁ、申し訳ありません」。俺は素直に頭を垂れた。
どうみても俺の行動は、大人気がないのであった、素直に反省。
「ところで、ママさん。わしのピラフじゃが、追加で、タコ入れてくれる」
「は~い」とママ。
およ、ちょっと待ってくださいよ! 会長のピラフはもう厨房で作り始めていますよ。今からタコをいれてもタコのシーフードピラフにはならないのではないでしょうか?
会長ともあろう人が、ピラフの途中でタコを入れるように指示を出すとは、道理を曲げたらいかんと説教してる最中なのに。
俺はちょっとムッとしながら、カウンターの奥から皿に盛られたピラフがこっちに運ばれて来るのをじっと待った。
すると、俺の前には普通のピラフが……そして会長の前にははなんと「……..!!」
見ていた俺はニヤニヤが止まらなかった。
可愛らしいタコさんウインナーがチョコリとのった特製ピラフが白い皿に盛られていた。
「鵜澤君! 無理を通すと道理が引っ込むよ」
会長は爽やかに笑いながらそう言うと、可愛らしいピラフをぱくついた。
「おみそれしました、タコはタコでもタコさんウインナー入りのピラフとは! 完全に一本取られました」
【協力】
『銀鱗文庫』で助けていただいたマグロ仲卸「樋長(ひちょう)」の飯田統規会長、ピラフご馳走様でした。『銀鱗文庫』事務局長の福地享子さん、無理を言って申し訳ございませんでした。
取材・撮影/鵜澤昭彦