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動物写真に応用できないか

そんなあいつにリモコンカメラの教えを乞われたのである。

実は不肖・宮嶋、四年前には長距離リモート機材をすでに完成させていたのである。

それは動物写真とは全く関係なく、アメリカはハワイ州での日米両軍による地対艦ミサイルの実弾射撃シーンを撮影するためにである。ミサイル発射の瞬間の爆風をさけるためまた自身の安全のためランチャー(ミサイル発射装置)近くにカメラをセットしたら、1.5キロ以上離れて、カメラを操作する必要が生じたからである。サッカーの試合で迫力あるゴールシーンを撮影するため、ゴールネットすぐ近くのフィールドに置いたカメラを100メートル足らずの距離でリモート操作できる程度の市販の装置ではとても役に立たんかったのである。

そうやって遠距離リモコン装置を自慢そうに方々で吹聴していたのをあいつが聞きつけ連絡よこしてきたのである。

報道写真の技術が動物写真にも応用できぬものかと。

それをあいつがどういう状況で使うつもりだったのか今となっては知る由もないが、結局あいつが課したきびしい条件にかなわなかったのか、不肖・宮嶋の遠距離リモコン機材があいつの手に預けられることはなかった。

報道写真も、動物写真も、やってる事は同じ

思えば報道写真も動物写真もターゲットと場所は違えど、やってる事は同じである。

大海に落ちた針のごとくターゲットを捜しだし、あらゆる困難を乗り越え、近づき、そして、いかなる環境下になっても、いつでも撮れるよう集中力を切らすことなく、ひたすら待ちつづける。いつか撮れると信じて。

これらの作品からあいつの自然に対する無限の愛がうかがえるやの、命を削ってまでも撮りつづけた力作だのの評価は他の皆様におまかせしたい、

しかし、想像していただきたい。

これら1カット、1カット、たった1カット撮るためだけに何時間もいや何日もシャッターボタンに指をかけたまま待ちつづけた写真家の姿を。

そこは北海道である。どれほど寒かったか、沼地なのか崖っぷちかどれほど危険な場所なのか、さらにそこにたどり着くまでに何キロ森をさまよったのかを。

そして感じていただきたい。動物写真家に転じてからも、小原玲氏が生涯忘れえなかった報道写真家としての矜持を。

小原玲写真集『森のちいさな天使 エゾモモちゃん』(講談社ビーシー/講談社)より

宮嶋茂樹(みやじま・しげき)
1961年、兵庫県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。写真週刊誌『フライデー』専属カメラマンを経てフリーランスの報道カメラマンとして活躍し、イラクやコソボなど世界各地でもスクープ写真を撮影。2022年はロシアが侵攻した直後のウクライナに入り、1カ月以上にわたって取材を敢行した。5月には再度現地へ。ウクライナ取材での写真を多数収録した最新刊は『ウクライナ戦記 不肖・宮嶋 最後の戦場』。公式HP「宮嶋茂樹儂・サイト」https://fushou-miyajima.com/

小原玲(おはら・れい)
1961年、東京生まれ。茨城大学人文学部卒。写真週刊誌『フライデー』専属カメラマンを経て、フリーランスの報道写真家として国内外で活動。1989年の中国・天安門事件の写真は米グラフ誌『ライフ』に掲載され、「ザ・ベスト・オブ・ライフ」に選ばれた。1990年、アザラシの赤ちゃんをカナダで撮影したことを契機に動物写真家に転身。以後、マナティ、プレーリードッグ、シマエナガ、エゾモモンガなどを撮影。テレビ・雑誌・講演会のほかYouTubeに「アザラシの赤ちゃんch」を立ち上げるなど様々な分野で活躍した。写真集に『シマエナガちゃん』『もっとシマエナガちゃん』『ひなエナガちゃん』『アザラシの赤ちゃん』(いずれも講談社ビーシー/講談社)など。2021年11月17日、死去。享年60。

カメラマン故小原玲 メモリアル写真展「モフモフ wa カワイイ」天国からの贈り物
期間:11月24日~30日(26日と27日は休館)
会場:セレモア紀尾井町本社セミナー会場(東京都千代田区紀尾井町3-12紀尾井町ビル6階)
時間:10時~17時
入場料:無料

カメラマン故小原玲 メモリアル写真展
カメラマン故小原玲 メモリアル写真展

【小原玲さんの関連グッズ】
動物写真家・小原玲さんが撮影したシマエナガやアザラシの赤ちゃんのカワイイ作品がプリントTシャツになった!(購入はコチラから)https://kodanshabc.base.ec/

シマエナガちゃんTシャツ
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