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冬の京都は、観光客が比較的少なく、ゆったりとした気持ちで街を歩けます。ストレスの多い毎日。疲れた心を癒すために庭を愛でたり、美に触れたり―― 。冬の京都で心をととのえてみませんか。

武将で江戸初期の漢詩人、石川丈山(じょうざん)が手がけた庭

侘びた山門をくぐると、空気ががらりと変わった気がした。高い木々に囲まれた『蓮華寺』は、濃密な静寂の中にある。受付を通って書院に足を踏み入れると、暗い室内から光の降り注ぐ庭が浮き上がってくる。

池を配した庭は深緑色の苔と高い樹木に覆われていて、池の上だけにぽっかりと空がのぞいている。訪れた日は少し曇っていたが、そのぼんやりした光も風流そのもの。

『洛北蓮華寺』

『詩仙堂』を造った石川丈山が手がけた庭は、詩仙堂同様、雨や曇りの日にも豊かな表情を見せてくれるようだ。来訪者はみな無言で、ゆるりと流れる空気に身を任せている。庭からの撮影は禁止だが、思わずスマホに手をのばしたくなる。その衝動をこらえ、緑と光がもたらす、その侘びた風景を心静かに味わいたい。

“俳諧の聖地”を訪ねて

京都市内の中心地から少し離れた一乗寺界隈は、街の喧騒を避けて過ごすにはうってつけ。その一角に“俳諧の聖地”として知られる『金福寺(こんぷくじ)』がある。門前の急な石段を登り、敷地へ出ると本堂の前には枯山水の庭園が開けている。

与謝蕪村直筆の『洛東芭蕉庵再興記』や『芭蕉像』など、興味深い展示のある本堂はひとまず後にして、飛び石に誘われるままに上を目指す。中腹には、松尾芭蕉が当時の住職・鉄舟和尚と風雅の道について語り合ったという芭蕉庵がひっそり佇んでいる。与謝蕪村もここを愛し、度々句会を開いたという。

『金福寺』

茅葺の庵は創建時の建材をできるだけ使用し、復元修復したもので、当時の面影を残している。訪れる人もまばらなこの場所では、風の音やポトリと落ちる枯れ葉のざわめき、心地よい自然のリズムが耳にすっと流れ込んでくる。

さらに細い道を上へ進むと、開けた視界からは、背後に愛宕山が広がる京都の街を一望できた。多くの俳人を惹きつける金福寺の豊かな自然が、疲れた現代人の心を安らげてくれるのだ。

椿、燈籠、楓、松がぴたりとはまって見える「しきしの窓」

京都の静かな寺院は中心地から離れた場所に多いが、『雲龍院』があるのは京都駅からもほど近い東山区。それでいて森の小道のようなアプローチを進むうちに、いつしかひっそりとした場所へと分け入る気分になってくる。

庭園自慢の寺は数知れずの京都だが、ここではその庭園を覗く窓にこそ風雅が宿っている。書院にある悟りの窓に向かって座ると、枝ぶりの良い梅の木がまるで掛け軸のように美しく見えた。右隣には四角い迷いの窓があり、禅の世界を投影したふたつの窓は一対になっているという。

『雲龍院』

有名な「蓮華の間」は4枚の雪見障子に四角く窓が切られ、椿、燈籠、楓、松がぴたりとはまって見えることから「しきしの窓」とも呼ばれる。この部屋に座して、しばし日本の美に浸るのもいいだろう。

さらに書院の奥へと進むと、大きく開かれた窓から見事な庭を一望できる「大輪の間」がある。用意された椅子に座り、瞑想石に足をのせて清々しい外の空気を吸い込めば、体の中からリフレッシュできそうだ。

人の多い京都だが、それでも少し外せばそれほど混み合わない寺も多い。冬の引き締まった冷たい空気に包まれ、静けさに身を委ねて心を解きほぐしたい。

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『洛北蓮華寺』開放感たっぷりの静謐な庭を眺めて自然と一体にな...
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おとなの週末Web編集部
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