ラーメンのスープと絶妙なマッチング
またまた驚いたのは、具材は高菜のみで目玉焼きがトッピングされているシンプルこの上ない「タカナチャーハン」。
チャーハンだけ食べると、やや物足りなさを感じるものの、ラーメンのスープをひと口飲んでから食すと味がガラリと豹変する。スープの旨みと高菜の酸味、コクがそれぞれ引き立て合うのだ。
高菜ご飯でもよいのでは? というのは素人の考え。油で炒める、つまりチャーハンにすることで高菜の香りとコクをアップさせて、スープと絶妙なマッチングが生まれるのである。サイドメニューとしては完璧としか言いようがない。チャーシューと卵、ネギの、いわゆる普通のチャーハンも合うとは思うが、ここまでのインパクトはなかっただろう。
「実はこれも偶然の産物なんです。親戚から高菜をたくさんいただいたのですが、実は私の両親は高菜が苦手で……。捨てるのももったいないし、賄いで高菜を入れたチャーハンを作ってラーメンと食べたところおいしかったのでメニューに加えました。私のラーメンに足りない“香ばしさ”がプラスされるのでオススメです」(石黒さん)
それにしても、営業が金・土・日の3日間というのがもったいない。『富田屋』に足を運んだ人は皆、そう思うだろう。が、これにはワケがある。
「みりんの仕込みや瓶詰め、ラベル貼りもありますし、得意先への御用聞きや配達もほとんど私ひとりでやっているので、3日間が限界なんです。それでも楽しみにして通ってくださる方がいるのでありがたいです。月曜日を除く火~日曜日は、店でみりんの販売もしています」と、石黒さん。
「戸田みりん」は生産数が少ないため、問屋へは卸しておらず、昔から付き合いのある酒屋や食料品店へ石黒さんが自ら配達している。「戸田みりん」を扱っている店は東海地方が中心となるが、関東や関西、東北にもある。中にはネット通販を行っている店もあるので「戸田みりん」が欲しい方は検索を。
取材・撮影/永谷正樹