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愛知県は味噌や醤油など醸造業が盛ん。醸造所は知多半島や三河地方に集中しているが、名古屋港にほど近い名古屋市中川区戸田界隈もかつてはみりんや醤油の蔵が軒を連ねていたという。

しかし、時代の流れとともに1軒、2軒と減り続け、今やたったの1軒になってしまった。100年以上にもわたってみりんの醸造を手がける『糀富(はなとみ)』がそれだ。

捨てられなかったみりんへの思い

と、ここまで読んで「チャーラーとどんな関係が?」と思った方も多いだろう。後からちゃんと紹介するので、もう少しつき合ってほしい。

「戸田みりん」というブランドで販売されている『糀富』のみりんは、昔ながらの製法で作られており、素朴な甘みとまろやかな口当たりはスーパーなどに並ぶみりん風調味料とはまったくの別物。名古屋の料理人の間で「日本一のみりん」との呼び声も高い。

『糀富』が手がける「戸田みりん」。ツヤ感や伸びがみりん風調味料とはまったく違う。飲用する人も多く、炭酸水で割るとおいしい「みりんハイボール」になる
『糀富』が手がける「戸田みりん」。ツヤ感や伸びがみりん風調味料とはまったく違う。飲用する人も多く、炭酸水で割るとおいしい「みりんハイボール」になる

「平成元年に火事でみりん蔵が焼けてしまい、廃業を考えましたが、長年付き合いのある取引先やお客さんから何とか続けてほしいと言われて、細々と続けてきました。私も家業を継ぐ気はなかったんですけどね」と、話すのは4代目の店主、石黒靖浩さんだ。

『糀富』4代目で『富田屋』の店主、石黒靖浩さん
『糀富』4代目で『富田屋』の店主、石黒靖浩さん

石黒さんは焼肉店やファミリーレストラン、弁当店など飲食店での勤務経験が長く、料理の仕込みなどでみりんを使うたびに家業のことが心に引っかかっていた。

6、7年前のある日、休日に先代である父親の仕事を手伝ったとき、やはり自分にはこの道しかないと思い、家業を継ぐ決心をしたという。さらに、石黒さんは10年以上前から独学でラーメンを作っていて、自分でも納得する味を完成させた。そして、金・土・日の昼と夜各10杯限定でラーメン店『富田屋』を開店させた。

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永谷正樹
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