濃いめの味付けにはワケがある
私はデフォルトの「長浜ラーメン」一択。麺の上にのるのは、チャーシューとメンマ、きくらげ、すりごま、そして、たっぷりのネギ。卓上に置かれた紅ショウガを添えると実に旨そう。では、いただきます!
うん、これ、これっ! この味! スープに豚骨特有の臭みはまったくない。それどころか、豚の旨みのみを抽出している。麺は長浜ラーメンらしい低加水の細麺。ポキポキとした心地よい食感とともに広がる小麦の香りがすばらしい。替え玉(150円)をリクエストしたいくらいだが、今回はチャーハンがあるからガマンだ。
と、思っていたら、チャーハンが運ばれた。おおっ、何と美しいビジュアルだろう。油を含ませた卵とご飯が見事なまでに一体化している。と、書いてもわかりにくいかもしれない。中華鍋の扱いが未熟だと、炒めムラができたり、卵に火が通り過ぎて固まったりしてしまうが、このチャーハンは完璧なのだ。きっと中華鍋の振り方が達人レベルなのだろう。
チャーハンをレンゲですくって口へ運んでみる。うん! 口の中でパラッとほぐれるものの、食感はしっとり。大きめにカットされたチャーシューも旨い。
味付けは塩とコショウだが、オイスターソースやチャーシューのタレを使っているのか複雑な味わいがする。味が濃いか薄いかといえば、濃い味である。しかし、この店でよく見かけるのは、ネクタイを締めたビジネスマンよりも作業服姿の現場仕事の男たち。濃いめの味付けが正しいのだ。
長浜ラーメンのスープを飲み、まだ味の余韻が残っているうちにチャーハンを頬張ると、これまた旨い。メンマやきくらげをおかずにチャーハンを食べても旨い。町中華のチャーラーとは趣が異なるが、これはこれでアリだと思った。
何よりも、私にとっては懐かしい思い出の味が30年近く経った今もまったく変わっていないことがうれしかった。しかも、チャーハンがおいしいという新たな発見もあった。これからも近くを通りかかったら立ち寄ってみようと思う。
取材・撮影/永谷正樹