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1晩で牛を1頭平らげた軍曹と部下

常識を越えた食欲は、見る人、聞く人に畏怖の念を抱かせるものだ。2人の男が牛を1頭、1夜でたいらげたというウソのようなお話。

時代はずっこけながら移って、ギロチンの露と消えたルイ16世の時代に、すさまじい胃袋の主がいた。

食通で有名だったルクサンプール元帥が、馬術の試合の優勝者に元帥自慢の立派な種牛を与えた。その牛は1トン半はあろうかという堂々たる体軀をしていた。どこかでメスを見つけてやれば、飼主にいつまでも利殖の副収入をもたらしてくれそうな種牛だった。その優勝牛は、ひげの立派なチュレンヌという軍曹に与えられた。

翌朝、兵営の庭で元帥は軍曹の姿を見かけた。そこで牛が元気でいるかどうか声をかけてみた。

「どうかな軍曹、牛は」

「はい、閣下」

軍曹は直立不動で答えた。

「大変けっこうでした。昨夜あれから部下と2人ですっかりご馳走になりました」

残念ながら歴史的快挙の片われ、部下の名前は記録に残っていない。

(本文は、昭和58年4月12日刊『美食・大食家びっくり事典』からの抜粋です)

『美食・大食家びっくり事典』夏坂健(講談社)

夏坂健

1934年、横浜市生まれ。2000年1月19日逝去。共同通信記者、月刊ペン編集長を経て、作家活動に入る。食、ゴルフのエッセイ、ノンフィクション、翻訳に多くの名著を残した。その百科事典的ウンチクの広さと深さは通信社の特派員時代に培われたもの。著書に、『ゴルファーを笑え!』『地球ゴルフ倶楽部』『ゴルフを以って人を観ん』『ゴルフの神様』『ゴルフの処方箋』『美食・大食家びっくり事典』など多数。

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