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風呂からあがって10分で出来ちゃった

「モンロー・ウォーク」と「スローなブギにしてくれ(I want you)」について、南佳孝に訊ねたことがある。

“「モンロー・ウォーク」はラテン系でよく使うシンプルなコードですぐに出来た。多分、10分くらいで出来ちゃったと思う。風呂からあがって、気分が良くて、ギターを鳴らしていたら、あっという間に完成した記憶があるね。作詞のえっちゃん(来生えつこ)も、俺のイメージ通りの詞をつけてくれた。 郷ひろみくんのカヴァーからヒットしたわけだけど、何かラッキーな気分だった。えっちゃんは、「セクシー・ユー」というタイトルに変えられたのを怒っていたけどね”

“「スローなブギにしてくれ(I want you) は、「モンロー・ウォーク」に比べてずっと難産だった。イメージは湧いてきても、曲の出だしがなかなか決まらなかった。ハードボイルドは好きなんだけど、そのイメージを曲に固定するのに苦労した。だから、ヒットした時は「モンロー・ウォーク」よりずっと嬉しかった”

南佳孝のことを最近のインターネットで検索すると、“シティミュージックのパイオニアのひとり”と評されているのをよく目にする。それは間違いではないとは思うが、ぼくにとっての南佳孝は、最高のシンガーという位置付けだ。どこかスモーキーで、どんなフレーズでも必ず自分ならではの歌に変えてしまう稀代のヴォーカリスト。それが南佳孝だと個人的には思っている。

南佳孝の作品の数々

岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。最新刊は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)。

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