『おとなの週末Web』では、グルメ情報をはじめ、旅や文化など週末や休日をより楽しんでいただけるようなコンテンツも発信しています。国内外のアーティスト2000人以上にインタビューした音楽評論家の岩田由記夫さんが、とっておきの秘話を交えて、昭和・平成・令和の「音楽の達人たち」の実像に迫ります。今回から、山下達郎が登場します。第1回は、山下達郎へのインタビューを通じて「アーティスト」の呼称について考えます。
いつから「ミュージシャン」は「アーティスト」になったのか
いつの頃からだろうか、レコード会社の社員やプロダクションの人間が、所属しているミュージシャンをアーティストと呼ぶようになった。ぼくの記憶では、バブルの始まる前、1980年代半ばぐらいからだったと思う。
現在ではアーティストと呼ぶのが当たり前になっている。付き合いのある某大手レコード会社のマネジメント部門に属するマネージャーは、デビューしたばかりの10代のアイドル・タレントでさえ、アーティストさんと呼ぶ。アーティストにさんまで付けているのだ。
この傾向はSNSなどで投稿している、まったく無名のアマチュア・ミュージシャンまで広がっている。ツイッターなら自分のプロフィールに“アーティスト”と堂々と記しているのだ。
単なる言葉なんだから、どうでも良いのかも知れないが、ぼくには違和感がある。アーティスト=芸術家という称号は、自分で名乗ったりするものではなく、人が認めて初めて成立するものではないだろうか。