都内唯一の路面電車「都電荒川線」で昭和レトロを探す旅 「古い」と「レトロ」の違いとは?

都電荒川線を歩いて気づいた「古い」と「レトロ」の違い 坂道を登りながらこう考えた。「古い」と「レトロ」の違いはどこにあるのだろう、と。ここ数年、昭和のノスタルジーを感じさせるモノやコトが若い世代から「昭和レトロ」と呼ばれ…

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チンチン♪とベルを鳴らし発車する都電荒川線は都内唯一の路面電車。荒川区〜新宿区を結ぶ沿線で昭和を探す旅に出かけました。

三ノ輪橋停留所

北側入り口にかかる『ジョイフル三ノ輪の看板』

『ジョイフル三ノ輪の看板』

荒川線の端っこにある三ノ輪橋停留所から徒歩5秒。すぐそばにあるアーケード商店街「ジョイフル三ノ輪」は、ザ・昭和といった雰囲気だ。

ジョイフル三ノ輪

この昭和感を目当てにドラマや映画の撮影が行われることもしばしばだとか。通りに並ぶ各個人商店の看板は令和じゃお目にかかれないレトロなフォントで昭和感の演出にひと役買っている!

惣菜パンがおすすめ『パンのオオムラ』

『パンのオオムラ』

近所の子ども御用達『マツダ紙文具店』

『マツダ紙文具店』

商店街近くの喫茶店『コロラド』

『コロラド』

町屋駅前

『浜作(はまさく)もんじゃ会館』

カリッと食感のベビースターをのせた「ベビースターもんじゃ」は荒川区民のソウルフード。昭和の駄菓子屋で子供たちがおやつに食べていたものだそう。

ベビースターもんじゃ 650円

『浜作(はまさく)もんじゃ会館』ベビースターもんじゃ 650円

[住所]東京都荒川区荒川6-4-11 伸和ビル2階
[電話]03-3819-4855
[営業時間]16時〜22時半(22時LO)、土・日・祝:11時半〜22時半(22時LO)
[休日]木

荒川遊園地前

『福島屋』

元給食のおじさんの店主が作る「揚げパン」は砂糖にきな粉、ココアなど5種類の味から選べる。外カリッ、中ふわっとなパンはまさに給食で食べた味。

揚げパン 各100円

『福島屋』揚げパン 各100円

[住所]東京都荒川区西尾久6-30-8
[電話]090-8961-7221
[営業時間]11時〜18時 ※売り切れ次第終了
[休日]火

大塚駅前

『鳥忠』

大塚駅前停留所で降りたらぜひ立ち寄って欲しいのが『鳥忠』。創業から50年以上になる大衆割烹の店構えは、木造家屋の正面をモルタルで装飾した看板建築。香ばしく柔らかな焼鳥のほか旬の刺身もあるし、戦後に生まれ昭和のつまみとしてお馴染みのハムカツもおすすめ。

やきとり盛合せ 600円

『鳥忠』やきとり盛合せ 600円
『鳥忠』

[住所]東京都豊島区北大塚2-13-5
[電話]03-3918-3352
[営業時間]12時〜13時(平日のみ)、17時〜23時(22時半LO)
[休日]なし

『名匠たこ焼 上木(うえき)家』

たこ焼き屋が作る「たこせん」は、とろっとダシの効いたたこ焼きとソースがエビせんべいに染みて旨い。ちなみにたこせんは昭和40年代の大阪発祥。

たこせん 150円

『名匠たこ焼 上木(うえき)家』たこせん 150円

[住所]東京都豊島区北大塚2-28-7
[電話]03-3949-9368
[営業時間]11時半〜23時
[休日]無休

東池袋4丁目

『珈琲亭 蚤の市』

時が止まったような雰囲気が落ち着く喫茶店でいただきたいのは、牛乳とバナナをベースに季節果物入りの「ミックスジュース」。実は昭和生まれな「ピザトースト」もお供にどうぞ。

ミックスジュース 550円

『珈琲亭 蚤の市』ミックスジュース 550円

[住所]東京都豊島区東池袋1-47-3
[電話]03-3983-1067
[営業時間]8時〜19時、土:10時〜18時
[休日]日・祝

鬼子母神前

『並木ハウス別館』

手塚治虫が住んだことで知られるアパート「並木ハウス」の別館。昭和7年築とは思えないほどオシャレな装飾が施された洋風看板建築で、側面に木造家屋の造りがはっきり見られるのも面白い。国の有形文化財に登録されているが、カフェなどの店舗が入り今も活用されている。

『並木ハウス別館』

[住所]東京都豊島区雑司が谷3-19-5

『赤丸ベーカリー』

今年で創業100年を迎える町のパン屋さん。朝に焼きたてのパンで手作りする「コロッケパン」や名物「アカマルプリン」など、素朴でホッとするおいしさがある

コロッケパン 210円

『赤丸ベーカリー』コロッケパン 210円
『赤丸ベーカリー』

[住所]東京都豊島区雑司が谷1-7-1 
[電話]03-3971-6624
[営業時間]11時〜19時半
[休日]木、第1・第3水

早稲田

『文化クリーニング』

昭和23年創業のクリーニング店は軒瓦(のきがわら)付きの看板建築。往時の様子をそのまま残す建物は映画のセットのような趣だが、2代目店主が今も現役で営業中だ。

『文化クリーニング』

『メルシー』

近隣大学生行きつけの軽食&ラーメン屋。煮干しが効いた醤油スープとつるしこ麺が何度でも食べたくなる「もやしそば」は、なんと570円。ほかメニューも創業から65年変わらないおいしさとお手頃価格を守り続けている。

もやしそば 570円

『メルシー』もやしそば 570円
『メルシー』

[住所]東京都新宿区馬場下町63
[電話]03-3202-4980
[営業時間]11時〜19時
[休日]日

『いねや デリカコーナー』

大学近くで老夫婦が営む弁当屋の名物はどっさりフルーツがのった「唐揚げ弁当」。学生にも果物で栄養をとって欲しいという愛が詰まっている。

唐揚げ弁当 750円

『いねや デリカコーナー』唐揚げ弁当 750円
『いねや デリカコーナー』

都電荒川線を歩いて気づいた「古い」と「レトロ」の違い

坂道を登りながらこう考えた。「古い」と「レトロ」の違いはどこにあるのだろう、と。ここ数年、昭和のノスタルジーを感じさせるモノやコトが若い世代から「昭和レトロ」と呼ばれウケているようだ。

最近じゃ「平成レトロ」なんて言葉もあるし平成生まれの自分も古い人間になりつつあるのを感じるが、都電荒川線沿線をうろついているとどうやら「古い」からといって「レトロ」なわけでもないらしいことが見えてきた。

荒川線の沿線には「昭和レトロ」を感じさせる風景が多い。それもそのはず。都電荒川線は都内で唯一残る路面電車であり、都電は自動車が普及する前の東京で都民の足として活躍していた。

昭和18年のピーク時には1日の利用者数が約193万人にもなったそうで、昭和の人々の暮らしを支えた都電のそばには必然、昭和の香りが色濃く残っている。

たとえば三ノ輪橋停留所近くの「ジョイフル三ノ輪」がそうだ。線路に沿って南北に伸びるアーケード商店街には昔ながらの個人商店が並び、地元のお母さん方がチャリンコで闊歩する。パン屋に八百屋、米屋に文房具店、理容室まで。近隣住民のニーズを一手に引き受ける通りは雑多で、ちょっと煤ぼけていて、どこか懐かしい。

一方、沿線を歩いていると「おっ」と目を引く昭和な店構えでも「レトロ」と称していいのか迷うものもあった。かつて店だった建物はシャッターを閉じていて、「古い」姿をとどめているだけに見えた。どうにも寂しい風景だったがそう感じる理由は単純で、人気(ひとけ)がないからだ。

そういえば本記事でご紹介した「レトロ」スポットはどれも、その場所を愛する人たちの姿があった。店の店主もそうだし、日頃から通う常連客やウワサを聞きつけやってくるご新規さんもそうだ。当然、古い建物を手入れするのも店を続けるのも手間がかかる。

それでも未来に残そうという人の意思があるから「レトロ」は今に継承されているのかもしれない。「レトロ」たらしめるのは人なり。なーんて大袈裟に考えてみたけど、ノスタルジックな荒川線沿線は歩くだけで単純に楽しい。涼しくなったら荒川線で出かけよう。

撮影/石井明和、取材/藤沢緑彩

2023年10月号

※2023年10月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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