いよいよ本場のカルボナーラを実食!
まずはプロセッコ(スパークリングワイン)でひとり乾杯です。
シュワシュワのつまみは、バカラという塩ダラのフリット。これもローマ名物だそうです。あつあつのホクホクです。こりゃ期待にたがわぬお店と確信し、目的のカルボナーラも注文いたしました。
待つことしばしで、キタキタ来た~~。オイラのテーブルにカルボナーラが運ばれてきました。が、うん? これが、お目当てのカルボナーラ? とジジイは一瞬目を疑いました。
運ばれてきたのはスパゲッティではなく、かなり太いショートパスタを使ったお料理です。恥も外聞もなくお店の人を呼び、拙いカタコトのイタリア語で確認しました。
オイラ「これ、カルボナーラですか?」
お店の人「はい。パスタ・カルボナーラです」
オイラ「スパゲッティではないのですか?」
お店の人「はい。本日のパスタ“リガトーニ”でご用意いたしました」
と、ハキハキと明快に答えてくれたのです。そこには一点の曇りもなく、「間違いなくカルボナーラだからね」と自信満々な口ぶり。
たしかに太めのショートパスタである、リガトーニのカルボナーラは超おいしく、卵とチーズの濃厚なソースがリガトーニのギザギザした溝によくからんで絶妙な味わい。はっきり言って、「こんなうまいカルボナーラは食べたことがない」というレベルでした。
生きていてよかった。もちろん、完食です!
味わったことのないカルボナーラで満たされたオイラはそこで、はたと気づきました。「そ、そうか。スパゲッティ仕立てのカルボナーラを食べたければ、スパゲッティ・アッラ・カラボナーラと言わなければダメということか……」
実際、お店のメニューを見てみると、「Carbonara」というイタリア語メニューの下には、「Pasta,Egg,bacon,cheese」と英文での説明もありましたが、そこにも「spaghetti」の文字はなく、「Pasta」とあるまでです。
リガトーニももちろん、パスタのひとつです。なので、パスタと表示している限り、どのパスタを使おうとお店の都合ということなんでしょうか……。
頼りにしてきた本には、そんなことは一行も書かれていませんでしたが、本で紹介しているカルボナーラはスパゲッティを使った写真でした。実際、「カルボナーラ=スパゲッティ」と思っているのは、オイラだけじゃなく、日本のかなりの人々はそう思っているのではないでしょうか。
しかし、本場のローマではそうではなかったのです。オイラの知人のイタリア人に、このことを話してみたらこんな言葉が返ってきました。
「リガトーニでおいしかったんでしょ。だったら問題ないんじゃない? 私もスパゲッティのより、リガトーニのカルボナーラのほうが好きかも」
と。つまり、イタリア人にとっては、「スパゲッティか、リガトーニかはどうでもよく、おいしいことがいちばん」ということなのです。なるほど、納得。
ちなみに、イタリアでカルボナーラといえば、太めのショートパスタを使う場合が実際多いということです。なので、どうしてもスパゲッティのカルボナーラを召し上がりたい場合は、「スパゲッティ・アッラ・カルボナーラ」とパスタ名を指定して言いましょう……というお話でした。
文と写真/沢田 浩