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湯気の向こうに広がる豊かな香りと、とろりとした滋味深く温かなスープは、紛れもないごちそう。ひと口注ぎ込んだだけで身体が喜んでいるのがわかる。思わずため息のこぼれるような美味満載なスープの特集です。

『ビストロ バー ア ヴァン コダマ』 @渋谷

じっくり炒めた玉ねぎにコンソメを効かせた極上の冬の味覚

熱々をフウフウいって食べる「オニオングラタンスープ」は、ビストロの冬の定番。ここ『コダマ』でも冬から春先にかけてメニューに登場するやファンを喜ばせるのである。

シェフの児玉さんは、オーソドックスなビストロ料理を、驚くほど研ぎ澄ませる達人。そこに注がれる情熱と時間は計り知れないものがある。見かけは何の変哲もない「オニオングラタンスープ」も、見えないところに心血を注ぐ。

オニオングラタンスープ 1700円

『ビストロ バー ア ヴァン コダマ』オニオングラタンスープ 1700円 すくえばチーズがとろり、香ばしい香りが辺りに充満する

玉ねぎは時間をかけて炒め、3kgが500gになるまで凝縮させる。非常に手間のかかるコンソメスープをいったん作り、そこに炒めた玉ねぎを投入するのだ。普通はブイヨンなどのダシを使うところだが、あえてのコンソメで、ひたすらに一段上のおいしさを追求する

だからこそ、クリアなコンソメが玉ねぎのピュアな甘みを持ち上げ、飲むほどにぐいぐいと惹きつけられてしまう。

フランス人も唸るという『コダマ』では、「その方が楽しい」という理由でア・ラ・カルトのみ。いいワインをしっかり飲んで欲しいと、ワインリストには目をみはる偉大なワインが並ぶ。

寒い冬の夜は「オニオングラタンスープ」からスタートし、その先は黒板メニューであれこれ迷う。そんなビストロの魅力を目いっぱい楽しもう。

『ビストロ バー ア ヴァン コダマ』

[住所]東京都渋谷区渋谷1-6-4 せいこうビル1階
[電話]03-5962-7726
[営業時間]18時~22時半(20時半LO)
[休日]日、不定休あり
[交通]JR山手線ほか渋谷駅宮益坂口から徒歩10分

『ズッペリア オステリア ピティリアーノ』 @祖師ヶ谷大蔵

イタリアに根付いたズッパ=スープを日本に広めたい!

リストランテ『フィオッキ』のオーナーシェフ堀川亮さんが愛して止まないものがズッパ。その愛はズッパを食べるための姉妹店『ピティリアーノ』を作ってしまったほど深い。

ズッパはイタリアのスープのことで、店名に冠したズッペリアはなんと堀川さんが考えた造語とか。

「ズッパは浸すという意味だそうで、パンなどを浸したスープを指すようです」とは料理を担当する右田さん。でもそこは大らかなお国柄、スープ全般を指すこともあり、境界線は曖昧らしい。

リボッリータ 1650円

定番ズッパは9種類あるが、今回紹介するのは3品。

「リボッリータ」は黒キャベツやインゲン豆、トスカーナのパンを入れたスープで、仕上げにオーブンで焼くのは堀川さんが修業した店のレシピだ。

『ズッペリア オステリア ピティリアーノ』リボッリータ 1650円 これはまさに食べる野菜スープ

熊本県・天草から届く新鮮な魚介を煮込んで裏ごしした「チュッピン」はトマト味。「魚のピュレにならないように加減して裏ごしします」というだけに、ピュレ寸前のものすごく濃厚な液体だ。

うずら豆たっぷりの「ヨータ」は、ザワークラウトの酸味が面白いアクセントになっている。

どれも日本人がイメージするいわゆるスープではないけれど、でもそれこそがイタリア食文化の面白いところ。未知のズッパとの出合いに、ワクワクドキドキしてみたい!

『ズッペリア オステリア ピティリアーノ』

[住所]東京都世田谷区祖師谷3-4-9 2階
[電話]03-3789-0017
[営業時間]11時半~15時(13時半LO)、17時〜23時(21時半LO)
[休日]水(祝日の場合は営業)、不定休あり
[交通]小田急線祖師ヶ谷大蔵駅から徒歩4分

『bistro simba(ビストロシンバ)』 @新富町

フランス修業時代の思い出の味を熱々のココットで

大きなエビがドンと乗ったブイヤベースと共に、湯気を上げるココットが運ばれてくる。中身は追加のスープで「お好きなだけかけて」と太っ腹。

「料理は完成した瞬間が一番おいしい。とにかく早くテーブルへ届けたい」と菊地さんは目を輝かせる。菊地さんが最初に修業した先の南仏マルセイユはブイヤベースが名物。だから一層思い入れも深いという。

ここでは甘エビやオマールエビなどを惜しげもなく投入し、エビの香りを際立たせる。厨房を出た瞬間から魅惑の香りが食欲をかきたてるのだ。

シンバ特製ブイヤベース 2500円(1名分)

『bistro simba(ビストロシンバ)』シンバ特製ブイヤベース 2500円(1名分) 菊地さんが目指すのは“香りのある料理”。エビの香りをまとったブイヤベースはまさにそのものだ。エビの殻なども使うことで、食材を無駄にしないという気持ちをスープ作りに生かしている

実はこれ、修業先の名店『シェ・ミッシェル』でたまたま生まれたという。「余ったビスクを加えたらすごくおいしくなっちゃって」(笑)。それをさらにブラッシュアップさせたのだ。

こんなに食べられないヨと思っても、パンを浸すともう手が止まらん。たとえお腹一杯でも食べてしまう罪な味だ。

『bistro simba(ビストロシンバ)』

[住所]東京都中央区銀座1-27-8
[電話]03-6264-4218
[営業時間]17時半~24時(23時LO)、日15時~21時最終入店
[休日]月、火
[交通]地下鉄有楽町線新富町駅2番出口から徒歩6分

『ジロトンド』 @神保町

スープへの愛があふれ出すシェフの素材ありきのひと皿

『ジロトンド』のメニューには、そういえばいつもスープがある。聞いてみると、「イタリアでは店に必ずスープがあるんです。スープはメニューの中でひと息つけるような料理でしょう?僕にとってあってくれるとうれしい存在です」とシェフの阿部さんは言う。

素材ありきのこちらの料理は、季節によって、仕入れによって変幻自在。今回のスープも冬には頻繁に登場する。

ニニウファームの仔羊とちりめんキャベツのズッパ 1200円

『ジロトンド』ニニウファームの仔羊とちりめんキャベツのズッパ 1200円 味付けは塩だけ。体の中に染みわたるようなクリアな旨みが冬のこわばった体をゆるっとほどけさせる

北海道で羊飼いとして暮らす『ニニウファーム』から羊半頭を仕入れているので、メインディッシュなどに使えなかった部位や端肉、骨などでスープを作る。

シンプルに塩だけを加えてコトコト煮込み、旨みが液体の中に溶け出すのをひたすら気長に待つという。食べるとやさしい気持ちになるのは、そうやって大切に見守られたからかも。

「おいしいスープのある店は信用できる」と阿部さん。まさにここもそうですね。

『ジロトンド』

[住所]東京都千代田区神田神保町1-36-1 新神保町ビル1階
[電話]03-5244-5245
[営業時間]17時~24時(22時LO)、土15時〜22時(21時LO)
[休日]日 ※月に2日不定休あり
[交通]地下鉄半蔵門ほか神保町駅A5出口から徒歩5分

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おとなの週末Web編集部
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