さまざまあるパンのなかでもどこかクロワッサンは特別な存在。もちろんそれは、手が届かないとかそういうことではなく日々のごちそう、日々の最高、そんな存在なのかなと。その気持ちを実感させてくれるお店へ足を運んでみた今回のクロワッサン企画。栃木県・西那須野にある『ショウパン アルティザン ベイクハウス』よりお届けします。
目指したのは地元の人に喜んでもらえるクロワッサン
パン好きから、パンの聖地として注目されている栃木県那須周辺。古い別荘地ということもあり、昔から感度の高いカフェやパン屋が存在し、パン文化が根付いている。
そんな人気のパン屋が集まる那須塩原の隣町、西那須野にあるのがここ『ショウパン アルティザン ベイクハウス』。
駅から車で6分、街道沿いに立つ、肩の力が抜けた風貌の建物が格好いい。店主は、パンマニアの間でもよく知られているパン職人・平山翔さんだ。
開店早々に着くと、広い厨房ではまだオーブンが忙しく稼働し、次々とパンが焼けていた。店にはパンが放つおいしそうな香りが充満し、それだけで幸せな気分になる。声をかけると、しばらくして穏やかな物腰の平山さんが笑顔で現れた。
この店のクロワッサンはキリリッとした顔つきで凛々しい。そこに込めた思いはどんなものなのか、平山さんに聞いてみた。
「クロワッサンはできたてがすごくおいしいですが、ここの場合は地域柄、翌朝に食べる方が多いんですよね。大半の方に、どのくらい持ちますか?と聞かれるんです(笑)。なので僕が思い描くのは、当日はもちろん、翌日もおいしいクロワッサン。そこに焦点を当てました」
発酵バターをたくさん折り込むクロワッサンは、焼きたては香り立つが、時間が経つとバターが酸化していくのがネックだという。
「バターたっぷりの高配合、リッチにジュワッとバターが広がるクロワッサンは、僕も大好きなんです。でもやはり時間の経過とともに脂が空気に触れ、風味が悪くなっていくのが気になってしまう。そういうクロワッサンが、本当に翌朝までおいしいか?と考えたんです」
そこで平山さんは生地に折り込むバターを減らすという選択をした。それでも、バターが香るクロワッサンらしさは残したい。