2024年に新作で発売されても売れる
『First Love』は、25年過った今聴いて もみずみずしい感性があふれている。新作として2024年の今、発売されたとしてもかなりのセールス をあげるだろうと思う。それほど、楽曲とサウンドの鮮度が落ちていないのだ。
ベースになっているのは洋楽的なサウンドなのだが、日本人の感性離れした新しさがある。 全曲、彼女の作詞・作曲なのだが「甘いワナ 〜Paint It,Black〜」では、ザ・ローリング・ストーンズの名曲をサンプリング的に巧みに使用している。こんなところも彼女のセンスの良さが光る。
JASRACでコピーガード用の視聴曲
個人的な思い出だが、このアルバムが発売 された頃、CDの違法コピーが社会問題になった。そこで日本音楽著作権協会(JASRAC)は CDにコピーできないように信号を入れることを思い立った。東京・代々木のスタジオにエンジニア、オーディオ評論家などが集められ、 どのコピーガードがCDの音質に影響を与えないか、比較する試聴会があり、ぼくも音楽評論家の代表として、その末席に加わった。で、そのコピーガード用の試聴曲が宇田ヒカルのアルバムタイトル曲「First Love」だった。2日間の試聴会で耳ダコになるほど聴いたのが懐かしい。
25年前のアルバムなのに現在のJ-POPシーンに通用するサウンド。それが『First Love』だろう。
■『First Love』
01.「Automatic -Album Edit-」
02.「Movin’ on without you」
03.「In My Room」
04.「First Love」
05.「甘いワナ 〜Paint It,Black〜」
06.「time will tell」
07.「Never Let Go」
08.「B&C -Album Version-」
09.「Another Chance」
10.「Interlude」
11.「Give Me A Reason」
12.「Automatic -Johnny Vicious Remix-」
岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。近著は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)。