東京・人形町『玉ひで』プロデュースの鶏料理店『とり五鐵』がリニューアルオープン!
本当に美味しい店を紹介するために『おとなの週末』は、ライターが客として店を訪ねる覆面取材という手法でリサーチをしている。
これまで私も数多くの店に足を運んだのだが、丼もの特集において、不動の上位にランクインする店がある。
名古屋駅のJRセントラルタワーズ13階にある『とり五鐵』がそれだ。
ここは、東京・人形町で行列のできる親子丼の店として有名な老舗鶏料理店『玉ひで』の八代目当主、山田耕之亮氏がプロデュースした店である。
『とり五鐵』以外にも名古屋には東京の有名シェフが監修した店が数多くある。
東京ブランドに弱く、それらをもてはやす名古屋人や地元マスコミを、私は冷ややかな目で見ていた。
では、なぜ私は『とり五鐵』に足を運んだのか。
ただ単に、『玉ひで』プロデュースということを知らなかっただけである(笑)。
おっと、前置きが長くなった。そんな『とり五鐵』が今年8月にリニューアルオープンしたのである。
私があまりの美味しさに驚愕したのは、ここの「名古屋コーチン親子丼」(1580円)。
有名シェフ監修の店にありがちなのは、東京の本店の味をそのまま持ってくること。
オマケ的に名古屋限定メニューを作ることはあっても、メインはあくまでも東京の味なのだ。
そのほうがラクだし、なによりも東京の有名店というだけで名古屋人は色めきだつのでプロモーションをする必要もないのだ。
が、熱しやすく冷めやすいのも名古屋人気質。
3年も経つころにはオープン当初の行列もなくなるので、長い目で見ると、看板だけで商売するのはかなりのリスクを背負うことになると思うのだが……。
しかし、『とり五鐵』は違うのである。
2006(平成18)年にオープンする際、山田氏は名古屋で好まれる味を徹底的に研究した。
地元産のしょうゆやみりんを使い、名古屋人好みの味に仕上げているのだ。
「名古屋コーチン親子丼」のみならず、ココの親子丼の特徴は、卵の絶妙なとろみ加減。
トロトロ、フワフワの卵が丼ものの美味しさを決定づけるご飯との一体感を生み出し、最後の一粒まで美味しく食べられる。
昼の営業では「名古屋コーチン親子丼」をはじめ親子丼の単品のほか、手羽先唐揚げが付く「手羽先から揚げセット」(2100円)や、鶏きしめんが付く「鶏きしめんセット」(1980円)、手羽元のどて煮と手羽先唐揚げ、味噌かつが付く「名古屋名物膳」(写真・2800円)を用意している。
夜は「焼き鳥3本セット」(750円)や「名古屋コーチンやわらかレバー」(500円)などの酒の肴が豊富にそろう。
また、名古屋コーチンと銘柄鶏を用いた全7品の「地鶏と銘柄鶏の食べ比べコース」(5500円)などのコースも好評だ。
コースのメインは、名古屋コーチンのすき焼き、いわゆる「ひきずり鍋」。
愛知県西部、尾張地方の郷土料理で、食べる際に鶏肉を鉄鍋の底をひきずるようにして食べたのがその名の由来だ(諸説あり)。
そこから、「過去をひきずらないように」と、験を担ぐ意味で年末に食べられていた。
少し気が早いかもしれないが、忘年会にはぴったりのメニューだ。
『玉ひで』八代目当主、山田耕之亮氏が名古屋の味を研究して生まれた親子丼など料理の数々。
地元在住の私が食べてもなんら違和感を覚えないのは、260年間にわたって鶏料理と向かい合ってきたからにほかならない。
これが老舗の矜持ではなかろうか。
[住所]愛知県名古屋市中村区名駅1-1-4 JRセントラルタワーズ13階
[TEL]052-433-5102
[営業時間]11時~16時(15時半L.O.)、17時~23時(22時L.O.)※土、日、祝は11時~23時(22時L.O.)
[休日]無休
永谷正樹(ながや・まさき)
1969年生まれのアラフィフライター兼カメラマン。名古屋めしをこよなく愛し、『おとなの週末』をはじめとする全国誌に発信。名古屋めしの専門家としてテレビ出演や講演会もこなす。
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