今やクルマのローンの主流は、残価設定ローンだ。3年契約の場合、問題がなければ3年後の残価でクルマを引き取ってくれるので、その分だけ月々の支払いが軽減される。つまり、残価が高ければ、それだけ総支払金額が安くなるのだ。それでは、残価が高いクルマにはどんなものがあるのだろうか?
画像ギャラリー今やクルマのローンの主流は、残価設定ローンだ。3年契約の場合、問題がなければ3年後の残価でクルマを引き取ってくれるので、その分だけ月々の支払いが軽減される。つまり、残価が高ければ、それだけ総支払金額が安くなるのだ。それでは、残価が高いクルマにはどんなものがあるのだろうか?
残価設定ローンのメリット
ローンには、車両価格のすべてを返済して車両の所有権を手に入れる従来型のフルローンと、数年後の残価(残存価値)を除いた金額だけを返済する残価設定ローンがある。今は後者の人気が圧倒的に高い。
残価設定ローンでは、例えば3年契約において3年後の残価が45%であれば、3年間で残価を除いた55%を返済する。フルローンと違って返済を終了しても、車両は自分の所有にならないが、月々の返済額は安く抑えられる。
そして契約満了時には、車両を返却する、55%の残価を支払って買い取る、改めてローンを組んで車両を買い取るまで返済を続けるという、3つの選択を可能にしていることが多い。
今はメーカーや販売会社が残価設定ローンに力を入れるが、そのメリットは2つある。ひとつは月々の返済額を安く抑えられることだ。
今は安全装備や運転支援機能の採用もあって新車が値上がりしており、同じ車種同士で比べても、車両価格は15年ほど前の1.2~1.5倍に達する。新車の購入が困難になっているが、返済額の少ない残価設定ローンであれば購入しやすい。
2つ目のメリットは、残価設定ローンの返済期間を満了した時点で、ユーザーに車両を返却してもらい、別の新車で残価設定ローンを組む提案ができることだ。そうなれば新車が売れて、素性の分かった上質な下取り車も手に入り、中古車販売部門にもメリットが生じる。
このような事情があるから、各メーカーとも残価設定ローンには1.9~2.9%の低金利を実施するなど利用の促進に力を入れている。
リセールバリューの高いクルマがお得
残価設定ローンの損得勘定を大きく左右するのは数年後の残価だ。残価設定ローンでは、残価を除いた金額を分割返済するから、残価率(新車価格に占める残価の割合)が高ければ月々の返済額も抑えられる。
前述のように3年後の残価が45%であれば、3年間で残価を除いた車両価格の55%を返済するが、残価が60%に高まれば、3年間の返済額は40%で済む。返済期間終了時に車両の返却を前提にすれば、残価は高いほど月々の返済額が減って利用するメリットも大きくなる。
そこで残価の高い車種を探すと、新車価格の割に中古車価格の高いリセールバリューの優れた車種が多い。中古車として高く販売できれば、残価も高められるからだ。また販売促進対策として、敢えて残価を高めに設定することもある。特に高価格で売りにくい車種は、残価を高めに設定して月々の返済額を安く抑える。
コンパクトカーなど、一般的な残価設定ローンの残価率は、3年後が45%、4年後は33%、5年後は25%という具合だ。5年後の残価は、3年後に比べて大幅に下がる。
ところがトヨタアルファードは、3年後の残価が67%と圧倒的に高い。3年間で33%を返却すれば良い。4年後は60%、5年後でも53%と下落が小さい。
同じトヨタのランドクルーザー250は、3年後が66%、4年後はアルファードと同じ60%、5年後は55%だからアルファードよりも高い。
ランドクルーザーのような悪路向けのSUVは、ミニバンのアルファードに比べてフルモデルチェンジの周期が長く、発売からの時間の経過に伴う中古車価格の下落幅が小さい。そのために5年後でも55%の高い残価を維持できる。
残クレで買いやすい三菱トライトン
三菱トライトンは、3年後が59%、4年後は58%、5年後は55%だ。3年後の残価率は59%だから、アルファードやランドクルーザー250に比べて低いが、その後はほとんど下がらず、5年後はランドクルーザー250と同じ55%だ。
トライトンの今後の人気は未知数で、アルファードやランドクルーザー250と異なり、中古車価格がどのように推移するか分からない。しかし三菱では高値で維持すると見込んだ。そして多くのユーザーが残価設定ローンの返済期間を5年とすることもあり、5年後を55%の高残価にしている。
特にトライトンの価格は売れ筋のGSRが540万1000円だからピックアップとしては高額で、この割高感を補うためにも、残価率を高めて返済額を抑えた。このように残価設定ローンには、メーカーや販売会社のさまざまな思惑が絡んでいる。
文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/ トヨタ、三菱、Adobe Stock(アイキャッチ画像:78art@Adobe Stock)