長岡秀星のジャケットを見て閃いた!
『太陽神』という日本語のタイトルを思いついたの は当時のCBSソニー・レコードの名物ディレクター、Tさんだった。『太陽神』のジャ ケット・デザインは、宇宙やSFをイメージした作風で国際的に人気の高かったイラストレーターの長岡秀星(ながおか・しゅうせい、1936~2015年)が手掛けた。Tさんは、アメリカから送られて来た『All ‘N All』のジャケットを見るや、“太陽神”という言葉が脳内をかけめぐったと、電話でリリースのニュースを伝える時に教えてくれた。
それまでアメリカではEW&Fは超人気バンドだったが、日本では今ひとつ、一般的な人気に欠けていた。そのサウンドもさることながら、ジャケットのイメージとぴったり合った『太陽神』というタイトルも、このアルバムの日本でのヒットに貢献していると思う。
日本人好みの“ドンシャリ音”が特徴的
EW&Fのサウンドは、日本人好みのオー ディオ用語で言う“ドンシャリ”だ。低域がカチッとしていて、高域が対比的にシャリシャリした音質なのだ。
このアルバムのミックスダウン~最終的な音決めをしたアメリカの名エンジニア、ジョージ・マッセンバーグにインタビューした時、何故このような音質に仕上げたのか訊ねた。
ラジオが日本の何十倍も発達しているアメリカではあるが、1970年代、ブラック・ミュージックはFMでなく再生帯域の幅が狭いAM局中心にオンエアされていた。そんな中で EW&Fのように極端とも言えるドンシャリ音の楽曲は、音のエッジが立って、他の曲とひと味違う再生音色になる。要するに目立った音色になるので、そこを狙ったとジョージ・マッセンバーグは語っていた。
「宇宙のファンタジー」は日本とイタリアで大ヒット
「太陽神』と命名したTディレクターのもうひとつのヒットは、アメリカで人気のあったシングル「Jupiter(邦題:銀河の覇者)」でなく、「Fantasy(邦題:宇宙のファンタジー)」をシングルとして重点プロモーションしたことだ。
狙い通り、この曲は日本で大ヒットとなった。アメリカではさほどのヒットにならず、日本とイタリアでのみ大ヒットしたというのは興味深い。