バッドボーイは主力選手が陥りやすい?
野球の神様が降臨するのがラッキーボーイならば、野球の悪霊に取り憑かれたかのように、パタリと当たりが出なくなるバッドボーイの存在も見逃せない。
2022年の日本シリーズは、ヤクルトはオリックスと最終第7戦までもつれ込みながら惜しくも敗れた。このシリーズでは山田哲人が24打数2安打、打率.083、シーズン三冠王の村上宗隆も26打数5安打、打率.192と中軸2人の不振が敗因となった。
逆にオリックスがヤクルトに敗れた2021年の日本シリーズでは、オリックス打線の得点源、吉田正尚が27打数6安打、打率.222と抑え込まれている。2020年の日本シリーズでは、巨人の4番、岡本和真が13打数1安打、打率.077、打点も0で、全く当たりがなく、ソフトバンクに4連敗のストレート負けを喫した。
ラッキーボーイに伏兵的な選手が目立つのとは対照的に、バッドボーイは勝負のキーマンになる主力選手が陥るケースが多い。故にチームの敗戦に直結してしまう。自らに課せられた重責が分かるからこそ、シーズン中と同じようにプレーが出来なくなり、もがいて、苦しんでいる間に短期決戦は終わってしまうというわけだ。
不振に陥った中軸選手を「寝かせたままにする」のは、短期決戦の必勝法のひとつといえるだろう。大舞台である日本シリーズでは、いつ誰がバッドボーイになるかは分からない。それを知っているのも、やはり野球の神様だけなのかもしれない。
石川哲也(いしかわ・てつや)
1977年、神奈川県横須賀市出身。野球を中心にスポーツの歴史や記録に関する取材、執筆をライフワークとする「文化系」スポーツライター。
※トップ画像は、上空から見た横浜スタジアム「Photo by Adobe Stock」