家庭の味であったり、お祝いの場の逸品であったり。はたまた寿司店での〆に食べることも。太巻といなりは常食ではないものの、日常に溶け込んだ定番となっている。今回は、手土産にもよし、わざわざ食べに行くのもよしのちょっと贅沢な太巻。様々な思いを喚起させてくれる美味を召し上がれ!
懐かしのハレの日のご馳走を味わおう!
昭和世代の人にとって、太巻といなりと言えば真っ先に頭に思い浮かぶのは、家庭で手作りされたそれではないだろうか。我が家では子どもの頃、誕生日になると母がお寿司=太巻を巻いてくれた記憶がある。具材は何だったか。かんぴょう、玉子焼き、しいたけ、でんぶ……。
運動会になると友達が持って来ていたおいなりさんも懐かしい。ジューシーなお揚げに酢飯がたくさん入った大ぶりなものを思い切り頬張った。いずれにしても、ちょっとハレな日に食したご馳走で、ほんわりと温かい記憶とともにある。
そんな太巻といなりだが、いずれも食べられるようになったのは江戸中期と言われている。いなり寿司は、天保年間(1830〜44年)には、安価なストリートフードや見世物小屋での定番として江戸で人気を博したという。