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「メサビの鉄がカキを育んでいる」

という直感です。中学生のころ出会った東北大学のカキ博士、今井丈夫先生から、ミシシッピ川河口のカキの話を聞いていたからです。アメリカ東海岸のメキシコ湾は大西洋に面しています。だからここのカキは大西洋ガキ(アトランティック・オイスター)。ラテン語の学名は、クラスオストレア・ヴァージニカです。

太平洋に面した西海岸は、バンクーバー島の内側、シアトルを中心にカキは養殖されています。ですからパシフィック・オイスター。学名はクラスオストレア・ギガスです。

百年前、沖縄出身の宮城新昌という人が、宮城県の北上川河口石巻湾で種苗の生産に成功し、シアトルの海に移植した話は、以前に詳しくお話していますから、覚えてくださっている人もいると思います。

そんなことで、わたしは西海岸には訪れていました。そして、いつかミシシッピ川河口のニューオーリンズへ行ってみたいと、中学生のころから思っていました。いきなりその機会がやってきたのです。

5月、大阪府木材連合会が主催する「うなぎの森植樹祭」の前夜祭に、若者が同席しました。アメリカ五大湖近くのミネソタ州北側から北極圏へと連なるノースウッズと呼ばれる湖沼地帯でオオカミの写真を撮っている大竹英洋君です。大竹君は、ノーズウッズの写真で、2021年に第40回土門拳賞を受賞しています。ミシシッピ川源流にアメリカ最大の鉄鋼石鉱山、メサビ鉄山があるというのです。

…つづく「東日本大震災がきっかけ…大阪の材木王がカキとウナギの森を育てる「まさかの物語」【環境活動】」は、カキじいさんが中学生のころから思い描いていた「あこがれの地」に不思議な縁によって導かれたお話です。

連載カキじいさん、世界へ行く!第27回
構成/高木香織

●プロフィール
畠山重篤(はたけやま・しげあつ)

1943年、中国・上海生まれ。宮城県でカキ・ホタテの養殖業を営む。「牡蠣の森を慕う会」代表。1989年より「海は森の恋人」を合い言葉に植林活動を続ける。『漁師さんの森づくり』(講談社)で小学館児童出版文化賞・産経児童出版文化賞JR賞、『日本〈汽水〉紀行』(文藝春秋)で日本エッセイスト・クラブ賞、『鉄は魔法つかい:命と地球をはぐくむ「鉄」物語』(小学館)で産経児童出版文化賞産経新聞社賞を受賞。その他の著書に『森は海の恋人』(北斗出版)、『リアスの海辺から』『牡蠣礼讃』(ともに文藝春秋)などがある。2025年、逝去。

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高木 香織
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