カキが旨い季節がやってきた。ジューシーなカキフライ、炊きたてのカキご飯。茹でたカキに甘味噌をつけて焼くカキ田楽もオツだ。カキ漁師は、海で採れたてのカキの殻からナイフで身を剥て、海で洗ってそのまま生で食べるのが好みだという。
そんなカキ漁師の旅の本が出版された。『カキじいさん、世界へ行く!』には、三陸の気仙沼湾のカキ養殖業・畠山重篤さんの海外遍歴が記されている。
「カキをもっと知りたい!」と願う畠山さんは不思議な縁に引き寄せられるように海外へ出かけていく。フランス、スペイン、アメリカ、中国、オーストラリア、ロシア……。世界中の国々がこんなにもカキに魅せられていることに驚く。そして、それぞれの国のカキの食べ方も垂涎だ。
これからあなたをカキの世界へ誘おう。連載28回「東日本大震災がきっかけ…大阪の木材王がカキとウナギの森を育てる「まさかの物語」【環境活動】」にひきつづき、メサビ鉱山からミシシッピ川をくだってニューオーリンズへ向かう旅である。どんな胸躍る出会いがあるのだろうか。
【前回まで】
「森は海の恋人植樹祭」で多くの人々と出会い、人生が豊かになってきたと振り返るカキじいさん。2011年、東日本大震災後に仮設住宅建設のため気仙沼を訪れた大阪府木材連合会長・津田潮さんが植樹祭に立ち寄り、森が海の生き物を育てるという考えに共鳴、大阪から大勢を連れて参加するようになった。津田さんを通じ淀川で天然ウナギを獲る漁師の存在を知り、川を守るため「ウナギの森植樹祭」も始まった。2019年の前夜祭では写真家・大竹英洋氏と出会い、彼がナショナルジオグラフィック掲載に至るまでの情熱的な旅を聞き、筆者の新たな関心がミシシッピへ広がっていった。
ミシシッピ川源流からニューオーリンズまでの旅に
わたしも30年前、まったく先の見通しは立てられなかったのですが、とにかく第一歩を踏み出さなきゃ、と、「森は海の恋人運動」を立ち上げました。「どこか似ているね」と意気投合したのです。
そして、カキの成長には、フルボ酸鉄が必要だという話をしますと、ミシシッピ川源流近くのメサビ鉄山のことを教えてくれたのです。大竹君のフィールドであるノースウッズで海のことを考えるとすれば、カナダの北側の海だそうです。ミシシッピ川河口のメキシコ湾との関わりはまったく頭になかったそうです。
「おもしろそうですね」
と言われたので、わたしは思わず大竹君の手を握り、そこへ連れていってくれないか頼んでいたのです。津田さんも、カナダから木材を輸入している関係から森と海との関係に興味を示していました。
大竹君にガイドをしてもらってミシシッピ川源流からメサビ鉄山、そして河口のニューオーリンズまで旅をしてみよう、そんな話がまとまったのです。わたしがなぜ鉄に夢中になっているか見せたいと思っていましたので、妻も連れて行くことにしたのです。
2019年8月5日、デルタ航空機は羽田空港を飛び立ちました。アメリカ中西部ミネソタ州都にあるセントポール空港までの旅です。セントポール空港に着くと、予約してあったレンタカーに乗り込み出発です。ハイウェイを5時間走ると五大湖の1つスペリオル湖が見えてきました。そして湖岸の古い町ダルースにつきました。

