蕎麦界にあって忘れちゃいけないのが立ち食い蕎麦。気軽に楽しめるとあってマニアもいるくらいです。立ち食い店で叶えられる豪華蕎麦をご紹介します!
画像ギャラリー蕎麦界にあって忘れちゃいけないのが立ち食い蕎麦。気軽に楽しめるとあってマニアもいるくらいです。立ち食い店で叶えられる豪華蕎麦をご紹介します!
プリップリの大粒牡蠣と上ミノ奇跡の立ち食い蕎麦『豊はる』@小川町
見て!牡蠣と上ミノが蕎麦の上で出逢ったよ。もうすぐオープン2周年。やわらかく煮た豚バラ肉やパイカ(豚バラ軟骨)という名物トッピングがありながら、「毎月新作リリースを自分に課している」と店主の西村さんは、個性派メニューを生み出す。
海藻がこれでもかとのる「三陸そば」、ダジャレが光る「せりせせりそば」など提供が延長されるものも多いから、品目が多くて券売機はもうカオスだ。
牡蠣と上ミノそば 950円
年明けもしばらく提供予定の牡蠣&上ミノは、カツオ節、宗田節、焼きあごで取る濃厚ダシのツユと見事な調和を見せる。田舎蕎麦用の粉を多く配合した麺も力強い。いやはや、千円でお釣りが来ちゃうとは!
蕎麦はもちろん、きしめんもおいしいですよ。
[住所]東京都千代田区神田小川町3-11-10 只野ビル1階
[電話]03-6826-9426
[営業時間]6時半〜18時(土・祝は〜15時)
[休日]日
[交通]都営新宿線小川町駅B7出口から徒歩6分
ラーメンファンの心もつかんだ20年続く名作種もの『a la 麓屋』@三田
店主の尾谷さんはフレンチ出身。かつて青山にあったフランス料理店「麓屋」が〆に出していた蕎麦をより気軽に楽しんでもらおうと、20年前に独立開業した。店名は“麓屋風”を意味する。
「コテリ」は、こってり系ラーメン店がひしめく三田で生き残るために考案された一杯だ。カツオ節の厚削りと昆布、干し椎茸でとったダシ、醤油の香り高いかえしのツユに、黒胡椒を効かせる。
コテリ 990円
北海道産蕎麦粉の麺は立ち食いとは信じがたいクオリティ。具はチャーシューと煮卵、ガーリックチップと揚げ玉がアクセントになって蕎麦とラーメンのハイブリッドな旨さを堪能できる。20年愛される妙味に拍手。
麺は茹でたて、天ぷらは揚げたてを絶対に守っています。
[住所]東京都港区芝5-26-10
[電話]03-3451-6882
[営業時間]11時〜14:25、17時〜20時50分LO
[休日]水午後、土・日・祝
[交通]都営三田線三田駅A5出口から徒歩2分、JR山手線ほか田町駅三田口から徒歩5分
どこか懐かしく繊細な風味のパワフル肉蕎麦『麺処 盛盛』@富士見台
12月で開業1年となる肉蕎麦のニューカマー。「一般的な立ち食い蕎麦屋のような天ぷらを入れる前提の濃いツユではなく、本来のツユの旨さを大事にしたい」と、店を切り盛りする島田親子。
カツオ節や宗田節、昆布の他に、イワシやアジ、干し椎茸も使ってじっくりとった香り高いダシが光る。醤油のフレッシュさを大事にした生かえしを使うのも特徴的だ。肉を噛み締める味わいを大切にし、豚方ロースの肉にはあえて味付けしない。
にぼし油汁そば 750円、卵トッピング 100円
ツユにとっぷり浸けて食べると、これがなんともいい具合。煮干し油を加える新作は、昔ながらの中華蕎麦を彷彿とさせるノスタルジックな旨さで、早くもリピーター続出だ。
たっぷりの肉と太めの蕎麦をワシワシどうぞ!
[住所]東京都練馬区貫井3-6-3
[電話]03-6826-2796
[営業時間]6時〜15時、17時〜20時(土・日は昼のみ)
[休日]日
[交通]西武池袋線富士見台駅南口から徒歩1分
うまい蕎麦はココ!ライター渡辺&編集武内の蕎麦屋談義
覆面取材を終えての対談ではないですが、今回立ち食い蕎麦を担当したライター渡辺と編集武内が、蕎麦について何だかんだと語り合ってみました。
武「今回もバラエティ豊かな店が揃いましたね。シブい街のこぢんまりとした店がほとんどです。しっぽりやるのにいい感じの」
渡「編集部員は全員本当に蕎麦好きですよね。誰もが何度も通いたい“マイ蕎麦屋”をひとつやふたつ持ってる。しかも、みんな呑兵衛だから、蕎麦はもちろん、酒とつまみもバッチリという店ばかり。ま、ボクは昨年に引き続き立ち食い蕎麦の担当でしたけどね」
武「立ち食い蕎麦、好きって言ったじゃないですか?」
渡「好きですけど、ボクも『浜町かねこ』みたいな蕎麦屋をオススメしてみたいんです。というか、そういう粋な大人の蕎麦屋を知ってそうと思われたい。あと、たまには座って食べたい」
『浜町かねこ』天ぷら 2700円
武「そうそう、今回はまず過去に取材した中でも、味、雰囲気、居心地が折り紙付きの店を選りすぐって“太鼓判の店”としています」
渡「イスがある時点でかなり居心地がよさそう。読者を代表し聞きますが、本当に旨いんですか?」
武「信じられないくらいストレートな質問ですね(笑)。そこはご安心ください。天ぷら、かき揚げ、鴨などなど、味を揃えて紹介しているので、好みの店にお出かけください。あったかい蕎麦ってやっぱり旨いなと思える店ばかりです」
渡「座って蕎麦前をやりたいんですよ。蕎麦屋って天ぷらや鴨なんかの焼き物もおいしいし、ダシがいいからおひたしや煮込み系も旨かったりしますよね。熱燗飲みながら、カツ煮からのわさび芋、〆に花巻そばというのが蕎麦屋飲みのテッパンコース。武内さんは?」
武「この季節だと、果実の白和えで冷酒、天抜きでお燗、〆はシンプルにかけとか最高。ここ1年半くらいで開店したお店には、蕎麦前というには立派というか品揃えが充実した居酒屋的な蕎麦店が多くあって。日本料理店で研鑽を積んだ店主が刺身も出していたり、一品料理のレベルがハンパない」
『蕎麦割烹 ながの』お造り盛り合わせ 1980円
蕎麦屋での長っちりは野暮
渡「蕎麦屋って、醤油とわさび、海苔を最高においしく味わえる場所なんですよ。だから、一杯やるには極上の場所なんです」
武「たまにはいいこと言いますね」
渡「昔インタビューした某映画監督の受け売りです。そういうことをしたり顔で言いたいんですよ、いい感じの蕎麦屋で。時に、どうして蕎麦屋の酒というヤツが旨いか、わかるかい?なんつって」
武「今回の記事を見てどうぞお好きなところへ行ってください。ところで、蕎麦屋で熱燗でも呑みながら話しましょうって言ったのに、なんで我々は今、巣鴨のネパール料理屋にいるんですかね」
渡「夜9時の待ち合わせじゃ、蕎麦屋は閉まってますよ。だから、せめてネパールの蕎麦がき“ディド”をつまみにホッピーでもと」
武「噛まずに喉で味わえっていう江戸っ子の蕎麦の食べ方と一緒だ。江戸っ子と言えば、蕎麦屋での長っちりは野暮だそうで。だから立ち食いは超粋です。年末年始くらいはワンコインと言わずに、千円札を握りしめて、ちょっと贅沢な立ち食いに出かけてほしいです」
渡「3店ともあまりに旨すぎて、呆然と立ち尽くしました」
武「イス要らなかったですね」
撮影/小澤晶子(豊はる、麓屋)、浅沼ノア(麺処 盛盛)、取材/渡辺高
※2025年1月号発売時点の情報です。
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