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見かけたとしても、丸ごとのあわびではなく、刺身として切って盛り付けられたものを見かける程度なのです。

ただし、例外の時期があるという。なじみの魚屋の店主によれば、

「正月前と、正月明けは魚屋の店先にも、丸ままで多少は並ぶよね」

とのこと。縁起物として古来から重宝されてきたあわびなので、正月前に欲しい人は当然いる。そこはわかるのだが、さて、正月明けにもなぜ並ぶのかがいまいちわかりにくい。

理由を尋ねると、先の魚屋店主から納得の答えがありました。

「卸のアワビ屋さんが正月用に仕入れたものをさばききれず、残っちゃうからさ。それで、年明けに出てくるの」

なるほど、なるほど、わかりやすい。需要と供給の理由からなのですね。

まさに小寒が現代版の「あわびの旬」

実際、東京都中央卸売市場の統計月報によれば、例年クロアワビの卸値は夏から秋にかけて高く、キロ当たり7000~8000円という高値。この高値を支えているのが、きっと高級おせち用の蒸しあわび需要……ではないかと、オイラはにらんでいます。

11月~12月に加工するためには、その頃に仕入れておかないと間に合わないはず、という読みです。まぁ、はっきりしたエビデンスはございませんが……。

しかも、12月になるとクロアワビの卸値は一気に下がり、キロあたり6000円台を推移し、1月から2月が最安値となるのです。

二十四節気によれば、ちょうど小寒(しょうかん=1月5日頃からの2週間)。魚屋に出まわるクロアワビに限らず、あわび本来の旬は夏から秋、なかでも6月から、産卵前の9~10月がいちばんうまいらしい。

ただし、値段も高いのでオイラは「旬」の意味を拡大解釈しています。旬本来の意味は、「よくとれて、味がもっともよい時」というもの。入手のしやすさから旬をとらえると、まさに小寒が現代版の「あわびの旬」となるのです。

そんなことから、ここ数年、年末から正月のはじめは、あわびを「おとな買い」して、蒸しあわびを楽しんでいます。味つけは、日本酒と昆布のみ。それでいて、市販の蒸しあわびとは別物の、いぶしたような滋味あふれる深い味に仕上がります。

そうなんです。市販の蒸しあわびや、あわびの煮貝は、ほとんどが醤油の味が強いのです。昔ながらの伝統食ゆえ、保存のためにも濃い味でなければならいのでしょう。ただし、高血圧(加療中)のジジイとしては、遠慮したくなるしょっぱさなのです。

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蒸す時間は6時間以上、蒸し器はかなり大きなもので...
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おとなの週末Web編集部
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