あのマキネンもGTI-Rをドライブ
日産としては選手権制覇を本気で狙っていたため、忸怩たる思いだっただろうが、バルブ崩壊により日産の業績が悪化したのもWRC撤退の要因となったはずだ。
2年目の1000湖ラリーでは、トミ・マキネンがGTI-Rをドライブ。マキネンと言えば三菱でチャンピオンになり、その後スバルでも活躍。さらにトヨタのWRCの立ち上げに大貢献したWRC界のレジェンドだが、日本メーカーとの縁の深さには驚かされる。もし、パルサーの戦闘力が高ければ、マキネンは日産の人となっていたかもしれない。
ユーザーのサポートは評価したい点
WRCでは不発に終わったGTI-Rだが、日本での販売はまずまず。そして、ラリー、レースの競技ベース車両のほか、NISMOモデルを限定で販売するなどユーザーをしっかりとサポートしたのは評価すべき点だろう。
2025年2月現在、パルサーGTI-Rを手に入れることは可能かと聞かれれば、答えはイエス。しかし、出モノは少なく常時ひと桁台数しか流通していない状況だ。相場としては特別なモデルを除き走行15万kmレベルで250万円前後といったところ。修復歴があって当たり前の状態であることも付け加えておきたい。もし惚れこんでどうしても欲しい、というなら、購入後にある程度お金がかかることを覚悟のうえ購入するしかないだろう。今後高くなっても安くなりそうもないクルマだけに、タイミングが重要になる点はお忘れなく。
【日産パルサーGTI-R主要諸元】
全長3975×全幅1690×全高1400mm
ホイールベース:2430mm
車両重量:1220kg
エンジン:1998cc、直4DOHCターボ
最高出力:230ps/6400rpm
最大トルク:29.0kgm/4800rpm
価格:227万円(5MT)
【豆知識】
日産は1983年にイタリアのアルファロメオと技術提携。その結果誕生したのがアルファロメオアルナ(ARNA)で、車名合弁会社の『Alfa Romeo e Nissan Automoveicoli S.p.A』の頭文字をとったもの。2代目パルサーにアルファロメオ製の水平対向エンジン、トランスミッション、フロントサスを搭載。アルファロメオのエンジン等の信頼性の低さ、没個性な日産デザインの組み合わせはクルマ界最大の弱者連合と揶揄されることも多い。アルナは1983~1987年に欧州で販売されたが、日産とアルファロメオの技術提携は成功せず、日本でも販売されなかった。
市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。
写真/NISSAN、ALFA ROMEO、TOYOTA、ベストカー